ティツィアーノ展が楽しみで楽しみで仕方ないので、ティツィアーノのダナエという作品について考察してみました。
こんなに楽しみなのに今週末は行けなさそうです…行った人はぜひ感想を聞かせてください!

まず、ダナエという作品は1つではないんですね。
今、私たちが見られるのは4作品のみ。本当はもっと沢山あります。
(といってもヨーロッパの美術館ですけどね)

では、その4作品を時系列順に並べてみましょう。
ダナエって何?なんて知識は後回し!

1544年。

1553-1554年。

1553-1554年。

1564年。

色味の違いは写真の撮り方の違いの可能性もありますが、どれも綺麗な女性ですねー。
女性のダラッとした姿勢は4枚とも全く同じですね。
一方、おばあさんが出てきたり天使が出てきたり、脇役が少しずつ異なるのが分かります。

そもそも「ダナエ」とはこの裸でダラッとした女性なんですが、幽閉されているんですね。
将来、父親を殺す子供を産むと予言され、幽閉されてしまいました。(マイノリティ・リポート!)

そんな彼女のもとに、黄金の雨が降り注ぎます。
そんな雨が降ってきたら、誰だってバケツをかざして金を集めますよね?
そんな感じですっかり金に魅了されてしまったダナエですが、なんと、黄金の正体はゼウスという神さまだったのです!
黄金に化けたゼウス…それはロールキャベツ男子みたいなものです。
実は肉食系だった黄金男に誘惑され、ダナエは妊娠してしまいます!

それでお父様は大変お怒りになり…と話は続くのですが、ティツィアーノの「ダナエ」は正にこの誘惑の現場を描いているわけです。

そう思って上の4作品を見返すと…ダナエの顔が好きな人を見る時のような、なんだかぼーっとした顔に見えますね。

ダナエのことが分かったら、早速4作品を比べてみましょう。

ポイントは、視線です。
どの作品でも、ダナエの視線は雲(若干人間っぽいものが見える)に向いています。
すなわち、ゼウスの愛を受け入れていると。

まず①は、天使がゼウスを部屋に招き入れているように見えるので、この天使が部屋の鍵を開けた犯人でしょう。
そしてダナエは生まれて初めて自分を愛してくれる男性の到来に歓喜しているようです。
ダナエも天使も美しく、とっても若々しい爽やかな絵ですね。

②は、天使ではなく老婆になっています。
確実に美しさと老いの対比と考えられるでしょう。
ルネサンスでは、老化は病気に等しいと考えられていたようで…(特に女性)
若くて美しい女性が愛を授かるのを祝福する一方、醜い老婆が黄金に夢中であることをバカにしてますね。
あえて老化を戒める表現になっているわけです。
性悪ですが、当時の価値観がよく分かります。

また、ダナエの傍らの犬も面白いですね。
おそらくダナエの父親の象徴でしょう。
ダナエはシーツをつまみ、犬にはゼウスが見えないようにしています。
つまり、娘の門限を何時にしようが、親の目を盗んでどこかで彼氏作ってるんだから無駄ですよ、というお父さんたちへのメッセージです。(ウソ)

③は②とほとんど同じでしょう。
ただ、犬などの描写が割愛されていることから、後でレプリカの作成を頼まれたのかも…と考えています。

④は老婆が皿で雨を受け止めています。
集め方がよりがめつくなったというか…
とにかく老いへの嫌悪が止まらないようです。

ところでダナエの傍らの花はバラでしょうか。
バラといえば愛の女神ヴィーナスの象徴です。
ということは、ティツィアーノは自らが描いたダナエに愛の女神を重ねていた…??
4作以上も描きましたからね。愛着があっても不思議ではありません。
(俺の嫁!ってやつですね)

ムチっとした体型から、ティツィアーノのダナエは高級娼婦のよう、と言われることが多いのですが、
理想の人を何度も何度も描くうちに、自分がダナエに恋してしまったのではないでしょうか。
そんな風に見えます。

絵画って、本当にミステリアスですね!


↓展覧会の感想はこちら
ティツィアーノとヴェネチア派展@東京都美術館の感想

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ティツィアーノ「フローラ」蘇る色彩
ティツィアーノ「マグダラのマリア」考察


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