「"天才"を売る」を読みました。



弊職は漫画も好きです。
今ハマっているのは憂国のモリアーティという英国紳士のクライムもの。

「"天才"を売る」で描かれるのは、漫画の編集者がどうやって新人の才能を見出し、磨き、ヒットを作るのか。
そのプロセスや思考を、8人の現役編集者にインタビューした本です。

ところで、編集者が名もない新人が売れることを確信できるのはなぜなのでしょうか?

弊ブログに置き換えると、この問いは、どうやって才能ある現代アーティストを見抜くのか?となるわけです。

難解だと思われがちな現代アートを読み解く鍵になるはず。
そう直感してこの本を手に取りましたが、かなりエッジの効いた斜め上の答えが書いてありました!

(雑誌pen 2017/5/1号で紹介されていました)


基本情報と概要

題名:“天才”を売る 心と市場をつかまえるマンガ編集者
著者:堀田純司
出版社:KADOKAWA
発売日:2017/3/27

売れた、売れなかった、は結果でしかない。
どんな作品にも、爆発的に売れる可能性がある。
そうでなかったとしても、少しでも売れる方向に持っていかなければならない。

売れる作品を作るために、最近流行りのビッグデータで解析とかしてるのかな?って思うじゃないですか。
ところが本書でインタビューされる編集者たちは、マーケティング手法をあまり使わないらしいんですよね。

この時点で既に新鮮。
少年ジャンプの編集者ですら、アナログな感覚を頼りに進んで行くんですって。

それはどんな感覚なのか?
漫画家のタイプによって変わるのか?
さらには、相性の良くない漫画家との付き合い方は?

現役編集者の生の声が収録されています。
出版社ごとにカラーが違う所もまた面白かったですね。


新しい作品を新しいうちに評価する難しさ

若手芸術家の展覧会に行ったこと、ありますか?

現代アーティストというと村上隆や奈良美智あたりを思い浮かべますが、若手というよりは既にベテランといった方がしっくりきます。
(円熟とはまた違うのですが。とても勢いがあって若々しいアーティストだと思います。)

弊職は、美大を出たばかりで無名の若手アーティストの才能を見抜くことができるのか?
とよく考えます。
(本当に凄い人は在学中に有名になっちゃうのかもしれないけど)

この本を読んで、編集者と漫画家の関係も似たようなものなのか、と感じました。
新人の持ち込み企画を読んで、連載するかどうか決めなきゃいけないんですって。
高々数話描いただけでどれだけ売れるかなんて分からないのは当然なのに。、

面白かったのは、ベテラン編集者といえど「俺の言うとおりに描けば売れる!」といった自信は持てないことですね。
それは、全ての漫画家に売れる可能性がある、という信条の裏返しでもあります。

「漫画で食べていく」と決意した人への敬意の表れなのです。
作り手である漫画家と、支える編集者の理想的な関係を見ることができました。

また、実はビジネス書かも?とも思いました。
人対人の仕事の進め方、相手のモチベーションの上げ方などなど。
登場する編集者は全員コミュニケーション能力が高いです。
正解や型が無い中で、リアルな1対1の仕事だからこそ、おだてるだけじゃダメなんですね。


まとめ

編集者の仕事とは、才能ある若手を見出すことではない。
どの漫画家も1人では見られない世界を見るために、編集者がいる。
逆もしかり。

弊職はそんな風に思いました。
芸術の世界でも、どんな仕事でも、1人では手の届かない世界に行くためにチームがあるんですよね。
そのためのコミュニケーションやモチベーションの保ち方などなど。
どんなビジネスにも応用できる、現役編集者の等身大のインタビュー本です。


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