鈴木春信展に行ってきました。

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可愛い着物に身を包んだら、命短し恋せよ乙女!
淡い色彩で浮かび上がる男女の清潔で微妙な距離感。
江戸時代のロマンスが、時空を超えて千葉に集結しました。
女子が好きなものがギュッ!っと詰まった展覧会です。


〜目次〜
1. 展覧会の基本情報
2. 例えばこんな作品がありました
 ①ピュアな距離感が少女漫画的
 ②モノクロからカラーへ
 ③ハイセンスな着物へのこだわり
 ④手の表情が繊細
3. 逆に惜しかったところ
 ①作品数が多すぎる
4. まとめ
5. 関連情報


展覧会の基本情報

展覧会名:ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信
場所:千葉市美術館
最寄駅:JR千葉駅(東口から徒歩15分)(アクセス詳細)
会期:2017/9/6〜10/23
作品数:約150点
所要時間:1.5時間
観覧料:一般は1200円
ロッカー:あり(100円、使用後返金)



例えばこんな作品がありました

①ピュアな距離感が少女漫画的

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鈴木春信「桃の小枝を折り取る男女」(1767-68年頃)
ボストン美術館

このもどかしい距離!
二人の空間は物理的には何もないけど、甘酸っぱい想いがぎゅっと詰まって見えます。
「桃の小枝」のとおり、柔らかい桃色の雰囲気
ああ、書いていて恥ずかしい…。

鈴木春信は、ドロっとした大人の恋愛や春画もあるにはあるんですけど、可愛らしい絵がとにかく似合うんですよね。
竹久夢二とテイストが似てます。
あと、ミュシャもなんとなく似てます。

本展はそれはもう爽やかでピュアでキュンキュンする距離感の絵が多いのです。
上の絵も、体の向き的には男女がそっぽを向いているんですよ。

だけど、あの人のことが気になる…ちょっと振り向いて見ちゃおうかな…?

って思ってチラ見したら目が合っちゃったパターンです!!
なんなのこの青春!!
私には無かった!!!



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鈴木春信「松契千歳」(1768-69年頃)
ボストン美術館

この絵もね、すごく微妙な距離感
分かります?座ってる男性の手に紙があるの。
これは、女性がお膳に隠して手紙を渡しているところなんです!!
他の人にバレないように、こそっと。
いやぁ、羨ましいたけ

周りの人にバレないよう、ポーカーフェイスで
もしかしたら、お互いに別の許嫁がいるのかもしれないし、親同士が仲が悪くて結婚なんてとても望めないのかもしれない。
隠さなきゃいけないけど、でも抑えられない気持ちの高ぶりが、この一枚だけで伝わってくるのです。

せめて気持ちだけは繋がっていたいね。
的な、甘美な絵ですわ…。



②モノクロからカラーへ

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石川豊信「伊達虚無僧姿の男女」(1751-64年)
ボストン美術館

1750年あたりの絵は2色刷りが一般的だったそうです。
この絵も赤と緑の2色ですよね。

それが、1760年代後半になるとこんな感じ。

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鈴木春信「伊達虚無僧姿の男女」(1769-70年頃)
ボストン美術館

急に色の数が増えた感じしませんか!?
黄色も赤も可愛らしい色彩ですし、黒も濃淡を使い分けています。
紙が白い状態で残っているのもポイントです。
石川豊信の絵に比べると、ぐっと洗練されました。
(豊信ディスではないんだけれども)

どうやら、鈴木春信の時代には「錦絵」なるものが流行ったそうで、版画に使う色の数もどんどん増えていったんだとか。
本展はだいたい
春信の諸先輩鈴木春信春信の諸後輩
という順序なので、色の表現力がぐーんと広がるのがよく分かる構成なのです。

なので、当時の人の「どんどん鮮やかになってく!凄い!」という感覚を疑似体験できます。

テレビが白黒からカラーになったような驚きかな。
弊職世代だと、ゲームボーイにカラーの機種が出たときの衝撃
あとは何だ、絵文字がキャリア共通で使えるようになった事件とか?
(昔はドコモからボーダフォン(!)に絵文字送るとになってたのよ)

もう少し若い世代だと…分からんな。
VRとか4Kはちょっと違う?



③ハイセンスな着物へのこだわり

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鈴木春信「見立三夕 寂蓮法師」(1767年頃)
ボストン美術館

日本画って、みんな同じ顔じゃないですか。
あろうことか、男も女も「引き目鉤鼻」で、見分けがつかないのは弊職だけじゃないはず。

日本画の顔の無個性な所は相変わらず苦手なのですが、見どころはそこじゃないんです!
着物です!
着物のデザインが見どころなのです!!

(個人的な意見です)

この「見立三夕 寂蓮法師」なんか、不思議なデザインじゃないですか?
ピンクの生地緑の葉っぱの模様が映えて可愛らしいです。
ジャングルジムみたいなやつは何なんでしょうか?
蔦を巻きつける棒かな?

ちなみに、この絵に関しては構図もモダンだし江戸時代っぽくなくて面白いです。
春信の尖ったデザインセンスが背景にも出ちゃってます。


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鈴木春信「女三宮と猫」(1767-68年頃)
ボストン美術館

この人の着物も柔らかな色合いだし、模様も控えめな感じで素敵。
ピンクの袴みたいなやつが可愛いです。おしゃれ。

しかも、簪も特別ですよね。
赤い花みたいなのが付いてます。
いいなぁ、可愛い髪飾り。

鈴木春信の絵の人気の秘密は、当時の女子をキュンキュンさせる可愛い着物デザインにもあったのではないでしょうか?
今見ても可愛い柄がたくさんあって、何度も「可愛い…」と独り言を漏らしてしまいました。
折り鶴の柄の着物が特に可愛かったです。
(画像が見つかりませんでした…ごめんなさい)

絵の見方に正解はありませんが、日本画に関しては、着物はしっかり見ないと損だと思います。
よく見ると登場人物の名前を暗示する柄だったり、おしゃれなだけでなく、絵師も工夫を凝らしていたのですね。



④手の表情が繊細

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鈴木春信「山吹の枝をさし出す娘(見立山吹の里)」(1766-67年頃)
ボストン

もう1つ、春信の少女マンガ的だと思う所は、手の描き方です。
日本画に描かれる手は大体華奢なんですが、春信のは特に華奢に見えました。

上の絵の場合、山吹の枝を持つ手がとても繊細です。
なぜか小指だけ立ってるというか、枝から離してるんですよね。
ベルばらとか、こういう感じで小指が立ってる手が描かれません?


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鈴木春信「『寄菊』夜菊を折り取る男女」(1769-70年頃)
ボストン美術館

これもそうなんですよね。
というか、指先だけで持てるレベルを超えてると思うのですが…。
まあ、そこはフィクションですからね。
何を持つときも小指を離していないといけないのです。

小指が離れてることによって、とにかく麗しい印象になるのです。
グーで握っていたら力んでる感じが出ちゃいますからね。
すらっと繊細で白魚のような手が大和撫子の証なのかもしれません。



逆に惜しかったところ

①作品数が多すぎる

これは良いことなんですけど、結構疲れてしまいました。
鈴木春信以外の作品も多く、しかしテイストが似ているので、最後まで集中して見続けるのは大変でした。
春信が後世の人に真似されまくるほど人気だったということは分かったのですが、いかんせん集中力が…。

付属の展示として同時代の画家のコレクションが展示されており、画風が正反対の伊藤若冲がとても印象に残ってしまいました。



まとめ

江戸時代の少女マンガに恋する浪漫浮世絵!

鈴木春信、という名前が既にズルいんですよ。
村上春樹的な。
絶対、綺麗な作品を作る名前じゃないですか。
その名前の印象と同じく、春風のように暖かくワクワクさせる可愛い作品ばかり展示されていました。
本展を見たらあなたもハルノビスト!

鈴木春信展、ぜひ行ってみてくださいね!



関連情報

鈴木春信展 公式HP

この本は日本画の歴史をさらっと学べておすすめです。
鈴木春信も載ってるし、何よりマンガが主体だから読みやすいです。
マンガでわかる「日本絵画」の見かた: 美術展がもっと愉しくなる!

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同じく、ボストン美術館から来日中の展覧会が上野で開催されています。
こちらは日本画以外にも西洋絵画・中国美術・エジプト美術・現代美術…とオールマイティ。



他にも沢山書いてきたなぁ…。
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