パリグラフィック展に行ってきました。

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羨ましいほどベルエポック!
戦争と戦争の間の平和な時代を彩ったパリのポスターたち。
庶民も富裕層も、それぞれのやり方で芸術を楽しんでいたあの時代。
時間も国も超えて、ベルエポックが三菱一号館美術館にやってきました!


〜目次〜
1. 展覧会の基本情報
2. 例えばこんな作品がありました
 ①ベルエポックなパリの街角再現
 ②ロッキー・スモーキー・ボナール
 ③ヴァロットンの潔い白黒
 ④猫好きスタンラン
3. 逆に惜しかったところ
 ①北斎とジャポニスム展との作品かぶり
4. まとめ
5. 関連情報


展覧会の基本情報

展覧会名:パリ♡グラフィック -ロートレックとアートになった版画・ポスター展
場所:三菱一号館美術館
最寄駅:東京駅
会期:2017/10/18〜2018/1/8
作品数:約90点
所要時間:2時間
観覧料:一般は1700円(三菱一号館美術館の割引)



例えばこんな作品がありました

イメージ画像と注記がある画像は、版画などで複数枚制作されており、展示品とは厳密には異なる作品です。


①ベルエポックなパリの街角再現

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写真OKエリアの展示風景


ベルエポック、ってウィキペディアでも解説が少ないワードなのですが、「良き時代」って意味なんだそうです。
普仏戦争が終わってから第一次世界大戦が始まるまでの平和な期間のことを指します。
19世紀末から1914年までで、パリが繁栄した時代のことです。

本展はドンピシャこの時代の展示です!
そのベルエポックの頃にはポスターが大量生産されるようになり、写真のような感じで掲示されていたんですね。
庶民にも手の届く所まで、アートが降りてきたわけです。

この時代を代表するのが、ロートレック

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アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレック 「ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ」(1891年)
※イメージ画像


超有名なポスターですね。
パリっぽい
パリっぽい以外の感想が思いつかないくらいパリっぽい

作品の芸術性とかそういうものを感じるのも良いのですが、弊職が面白いと感じたのは、ポスターの折り目です。

こんな素敵なポスターが外の壁に貼ってあったら、ワルなコレクターや転売屋さんが剥がして回ってたんじゃないかと。
現代でもよくある話かもしれないですけどね。

で、色んな人が大切に取っておいたからこそ、ロートレックたちのポスターが世界中の美術館に保管されているのです。
しかし、折り目色落ちなど、保存状態は様々なんですね。

どんな人の手に渡って、どんな風に扱われてきたんだろう?
そんなことを想像するのが堪らなく楽しいのです。

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写真OKエリアにて

パリの街角の実物大写真です。
こういう展示のしかたも珍しいですよね。

ちなみに何を売っているお店なのかは分からないです。
右側のお店はコルセット売っているのかな?

あれ??

お兄さん!!
知らないお兄さんがパリの写真に馴染んじゃってる!




②ロッキー・スモーキー・ボナール

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ピエール・ボナール 「『フランス=シャンパン』のためのポスター」(1891年 )
※イメージ画像


シャンパンの泡が弾けたポップコーンみたいに溢れてます。
髪もフリルもヒラヒラしちゃって、天にも昇る気分。
だって平和なんだもん。
ベルエポックなんだもん。

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ピエール・ボナール「『ラ・ルヴュ・ブランシュ』誌のためのポスター」(1894年)
※イメージ画像


こちらはが基調でかっこいいイメージ
文字の部分のaとvが傘の形になっていることに、弊職は衝撃を受けました。
なんてオシャレなデザインなのでしょうか。

なぜ傘なのかとか、そういうのはどうでもイイのです。
だってベルエポックなんだもん。
束の間の平和なんだもん。

どうしてでしょうか、ボナールの絵はをはらんでいるように感じます。
シャンパンの女性は楽しすぎて理性がぶっ飛んでますし、
ラ・ルヴゥ・ブランシュの方はギャングな雰囲気を感じます。

共通するのは、ヤバイ色気
麻薬的な匂いがする絵なんですよね。
こういう色っぽい作品は大好きです。
エロに頼らないところが偉いです。



③ヴァロットンの潔い白黒

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フェリックス・ヴァロットン「お金(アンティミテ V)」(1898年)
※イメージ画像


画面の半分以上が黒
しかもタイトルはお金

こんなのもう不幸な結末しか考えられないよね…。
お金というか、実家のために悪徳政治家に嫁ぐ乙女に見えます。
あるいは、どんどん要求が過剰になってセクハラの領域まで踏み込んでる映画監督と、要求を飲まないと出世できない若手女優とか。

そう、この時期の作品は先に掲載したような明るいものだけではないのです。
大衆向けの商業ポスターが大量生産される裏側では、お金持ちがレアな版画作品を集めていたようです。

ヴァロットンアンティミテシリーズは、限定30枚しか刷られなかったとのこと。
30枚刷ったら、版木(版画のスタンプになる方)を壊していたんですって。
同じ作品がそれ以上作られないように、ですね。

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フェリックス・ヴァロットン「5時(アンティミテ VII)」(1898年)
※イメージ画像


この作品も、似たような妖しさです。
動の右半分、静の左半分ですよ。
白黒のカキーンとしたはっきりさが残酷なくらい、大人の苦々しい空間
カキーンとしか表現できないですね、ヴァロットン作品のかっこよさ。

ところで5時っていうのは、午前と午後のどちらでしょうか?
それによってかなり意味が違ってくる気がするけど…?

弊職の妄想では、朝の5時
他の女性と会っていたご主人が帰ってきて、その音で奥様が起きるんです。
奥様は「あんた、どこ行ってたの」となじるんですね。
ご主人は「なんでもない」とか何とか言っちゃって。

朝早くから夫婦喧嘩になっちゃって、しかも分が悪いご主人が奥様を力で抑えつけつつ黙らせつつ、なんかちょっと違う展開に…
って感じ。

もーヤダ。
当時のお金持ちたちって、こういうの集めて何を思っていたのでしょうか?



④猫好きスタンラン

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テオフィル・アレクサンドル・スタンラン「シャ・ノワール巡業公演のためのポスター」(1896年)
※イメージ画像


これは見たことある!って人も多いのではないでしょうか。
シャノワールのポスター。
でもスタンランの名前はあんまり知られていない気がします。
ロートレックがムーランルージュなら、スタンランはシャノワール

猫の背中の毛が逆立ってるのが良いんだなぁ。
猫背というわけでもなく、シャキッと立っているのも特徴です。
おいでませ、っていう黒猫の声が聞こえてきますよね。

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テオフィル・アレクサンドル・スタンラン「ボディニエール画廊にて」(1894年)
※イメージ画像


こちらはスタンランの個展のポスターの書きかけです。
個展のシンボルまで猫にしてしまうっていうのは、相当の猫好きなのではないでしょうか。
三毛猫と黒猫、可愛いです。

ベルエポックといえば、弊職的にはミッドナイト・イン・パリなんですよね。
芸術の勢いが凄くて。それこそ絵だけじゃなくて、文学も音楽も
パリが最もパリっぽい時代なのですよ。
(日本にたとえると、高度成長期かな?バブルとは少し違う気がする)

そんな自由闊達な時代と、猫のモチーフ
ぴったりじゃないですか?
猫の媚びない姿勢がスタンランはじめ芸術家たちの意思の強さと被ります。

ところで本作、西洋美術館の北斎とジャポニスム展完成版が展示されているんですね。
見たくなりますよね、完成版。
ぜひ、北斎とジャポニスム展にも合わせて行ってみてくださいね!
※西洋美術館は上野です。





逆に惜しかったところ

①北斎とジャポニスム展との作品かぶり

特にロートレックの展示かぶりが多かったですね。
なぜ同じ時期に似たような展覧会になってしまったのか…。
世界遺産効果もあって知名度的に西洋美術館の方が人が集まりやすいので、なんとなく二番煎じ感があるのが勿体無いです。

もっと言うと、東京都美術館のゴッホ展とも結構被っている…
この3つの展覧会、なぜ同時に開催したの?

とはいえ、スタンランの作品は三菱で未完成品を見て、西洋美術館で完成品を見る、といった面白さもありますし。
エッフェル塔36景に至っては、両美術館で異なる絵を展示しています。
はしごするのもおすすめな展覧会です!



まとめ

無邪気と色気が交錯するベルエポックアート!

ここでは紹介しきれなかった画家がまだまだ沢山いるのです。
がっつり商品名の入ったポスターを見てパリっ子気分を味わうも良し。
レアな版画作品を見てお金持ちの秘密クラブを妄想するも良し。

あの頃のパリに行くことができるなら…
そんなもしもを叶える、リアル・ミッドナイトインパリ展覧会でした!

パリグラフィック展、ぜひ行ってみてくださいね!



関連情報

パリグラフィック展 公式HP


重い図録を通販できるのは嬉しいですね。
持ち帰りの不安が無くなります。

パリ・グラフィック:
ロートレックとアートになった版画・ポスター展


by ヨメレバ



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東京都美術館のゴッホ展でも版画が沢山展示されています。
ここにもいたロートレックの安定感。



他にも沢山書いてきたなぁ…。
今月の展覧会
今までに行った展覧会一覧


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