常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションである。
相対性理論のアインシュタインはそう言いました。人間の思い込み×目の錯覚×SNS映え=∞に最大化した本展は、お一人様に史上最も手厳しい展覧会!!
今回はブラック明菜がレアンドロ・エルリッヒ展をディスります!
〜目次〜
1. 展覧会の基本情報
2. 例えばこんな作品がありました
①あなたの存在によって完成する作品
② あなたが作品を面白くする
③ どうなってるの?もっと見たい!近づきたい!
④ お一人様に優しい展示
3. 逆に惜しかったところ
① お一人様の居場所がない
4. まとめ
5. 関連情報
展覧会の基本情報
展覧会名: レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル場所:森美術館
最寄駅:六本木駅
会期:2017/11/18〜2018/4/1
作品数:約30点(体感)
所要時間:1時間
観覧料:一般は1800円
ロッカー:あり(100円、使用後返金)
例えばこんな作品がありました
① あなたの存在によって完成する作品
レアンドロ・エルリッヒ「美容院」(2008/2017)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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ぱっと見、普通のおしゃれ美容室っぽいですね。
しかしよく見ると…鏡の手前と、鏡の中の世界が全然違う!
そう、鏡があるべき部分が窓的な穴になっているのです。
なので、自分ではなく穴の向こうの人が見えるのですね。
鏡に映るはずの人が映らないのです。
「ここには鏡があるべき」という常識を利用した作品です。
穴の手前と向こうとでは同じ美容室のセットですので、ドライヤーなどの小道具は鏡に映っているように見えます。
レアンドロ・エルリッヒ「美容院」(2008/2017)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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これは明菜氏の自撮り。
穴ではなく、本当に鏡がついている場所もあるので、ただただ美容室です。
しかし、穴で反対側と繋がっている席にお一人様が座ってしまうと…!
向こう側に知らない人が座った時、物凄く気まずい感じを回避できません!
「あ、…あ、いや、なんかすみません…」
と言いながらそそくさと席を立たなければならない無言の重圧をかけられるのです!!
鏡を挟んで彼氏と彼女が向かい合って写真を撮り合う和やかな様子を見ながら、ブラック明菜は思いました。
「楽しそうで羨ましい!!青春やり直させてくれ!!」
レアンドロ・エルリッヒ「試着室」(2008)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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こちらの作品も、SNSでよく見かけますよね。
試着室の鏡の部分が、本物の鏡のこともあれば、穴が空いて隣の試着室と繋がっているということもある作品です。
「ここには鏡があるはず」という常識を逆手に取っている点では、「美容室」ととても似ています。
レアンドロ・エルリッヒ「試着室」(2008)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
これは明菜氏。
鏡のある部屋では、鏡に映った自分の写真を撮ることで自撮りができます。
しかし、この作品の面白いのは、鏡が無くて隣の部屋と繋がっている部屋があること。
そこは移動ができるのですね。
しかも、鏡のあるところと無いところと、法則性がよく分からなくて迷路のよう。
だから、鏡が遠くの部屋にあると、こんな感じ。
レアンドロ・エルリッヒ「試着室」(2008)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
自分が遠い…!
こんなに遠い自撮りは今までに無かったですね。
さて、この原理を利用すると、「美容室」と同様に「鏡の手前と向こうで違う人がいる」状態を作り出せます。
こういうのは友達同士や恋人同士でやりたいですよね。
そして写真をSNSにアップするのです。
ちなみに、ツイッターにアップされたリア充写真を、弊職はチマチマいいねしています。
ところが、お一人様がやろうとするとこんな感じになります。
レアンドロ・エルリッヒ「試着室」(2008)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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誰!?!?
明菜氏は可憐極まりない女性のはずなのに…。
鏡の中に映るのはイカツイ男性…。
どういうこと!?
明菜「もしかして私たち…」
イカツイ男性「もしかして俺たち…」
「「入れ替わってる~!?!?!?」」
(知らないお兄さん、勝手に掲載してごめんなさい)
この作品は迷路のように試着室どうしが繋がっているのが肝ですね。
迷路を進むうちに、繋がっているのか、鏡に騙されているのか、訳が分からなくなってきます。
夢中になりすぎると、鏡だと気付かずに進もうとして激突しますので、気をつけてくださいね。
お一人様なのに鏡に激突してしまったら、全く居たたまれませんよ!
②あなたが作品を面白くする
レアンドロ・エルリッヒ「建物」(2004/2017)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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こちらもSNSでよく見かける作品ですね。
建物からぶら下がる自分を撮影するという、本展で最もお一人様難易度の高い展示です。
だがしかし、ディズニーランドにもUSJにも1人で行ってしまう弊職に不可能は無いのだ!!
腕力の無い明菜氏、懸命のぶら下がり!!
仕掛けはどうなってるの?
というと、こうなってます。
レアンドロ・エルリッヒ「ダルトン・ハウス[模型]」(2013)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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地面に建物の壁をデザインしており、45度に傾いた鏡に映すんですね。
そうすると、寝転がっているだけの人が、建物の壁にぶら下がっているように見えるのです。
レアンドロ・エルリッヒ「ダルトン・ハウス[模型]」(2013)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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なるほどねぇー。
本展は模型がたくさん展示されているので、仕掛けやアイディアまで楽しめるのがポイントですね。
レアンドロ・エルリッヒ「ダルトン・ハウス[模型]」(2013)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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ちなみに、模型では鏡の反対側は階段になっています。
上と下とで全く世界観が異なり、ちぐはぐ感が面白いです。
レアンドロ・エルリッヒ「建物」(2004/2017)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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ああ、皆さん楽しそう…。
お客さんの楽しそうな笑顔を、モザイクで塗りつぶしていく弊職…。
この悲しさが分かりますか?
本作を面白くするのは鑑賞者=参加者なわけです。
どんどん奇抜なポーズにチャレンジしたいですよね。
あえて壁面に立ってみるとか。
作品の可能性を広げるのは参加者!というスタイル、今のアートらしくて最高です。
ただ、一言言わせてほしい…。
お一人様を冷ややかな目で見るのはやめてください!!
③どうなってるの?もっと見たい!近づきたい!
レアンドロ・エルリッヒ「エレベーター」(1995/2017)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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なんの変哲も無いエレベーター…かと思いきや、中を覗くと、エレベーターの外側の景色なんですよ。
ケーブルが上下に無限に続いているんです。(同じく鏡のトリック?)
つまり、このエレベーターの中=外、外=中?
本作が最初に展示された展覧会では、作品の規定に「会場のエレベーターに入ること」あったそうです。
これを逆手に取り、エレベーターの中と外を逆転した本作では、「地球そのものが、宇宙そのものが、作品でもOKってことだね!」と主張しているのではないでしょうか。
しかし、エレベーターの中を覗き込もうとすれば手を触れてしまいそうになるのも必然…。
スタッフさんに「作品に触らないでください」と注意されるお一人様の情けなさよ…。
レアンドロ・エルリッヒ「眺め」(1997/2017)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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こういうタイプの作品はお一人様にも優しいです。
ブラインドの向こうのマンションで、カーテンも引かずに仕事やトレーニングに勤しむ方々が見えます。
動画になっているので、本当にお向かいさんを見ている気持ちになります。
本作では、鑑賞者の部屋はブラインドがあるので、向こうのマンションから我々のことは見えない設定になっています。
見る側と見られる側の非対称性…この歪みに気づくと、結構気持ち悪いんですよね…。
見られる側は「見られてるかも」なんて思ってないですし。
弊職も、日常生活で「見られてるかも」なんて考えたことないですもん。
レアンドロ・エルリッヒ「眺め」(1997/2017)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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ところで、「もっと見たい!」という気持ちに駆られ、石原裕次郎のようにブラインドを指で下げるお客さんが続出していました。
漏れなくスタッフさんに「作品に触らないでください」と注意されていましたが、これがお一人様だったら本当に恥ずかしくて居たたまれません…。
関係ないですが、「何かを逆手に取った作品」が連発する本展にいると、
「作品に触らないでください」すら逆手に取った作品をレアンドロ・エルリッヒ氏が発表してきそうに思えてしまいます。
④お一人様に優しい展示
レアンドロ・エルリッヒ「反射する港」(2014)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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こういうの、大好き!
本展の最初にある作品で、大型の展示です。
のっけから真っ暗で、感覚が研ぎ澄まされるんですね。
で、プールに浮かぶ船ですよ。
しかし、このプールに水はありません。
船の下側に「水面に映ってるっぽい形のオブジェ」を付け、
かつ「水に浮いてるっぽいリズムをコンピュータで再現し、揺らす」ことで、「水に浮かぶ船」を再現しています。
そんな面倒くさいことしないで、水を張って船を浮かべれば良いのに…。
100人中100人がそう思うでしょう。
弊職もそう思います。
しかし、「非効率なことをどれだけ本気でやれるか?」という心意気が現代アートなのです。
じっと見ていると癒されますし。
前述したSNS映えするキャーキャー系の作品だけでなく、じわじわ系の作品も良いですね。
レアンドロ・エルリッヒ「部屋(監視 I)」(2006/2017)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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1つの部屋の色々な場所にカメラを設置し、モニターに画像を映しています。
何も変化しません。
誰も部屋には入って来ないし、いきなり物が動き出す心霊サプライズもありません。
でも、なぜか見つめてしまうんですよね。
見所が無さすぎて、ぼんやり見ていられます。
レアンドロ・エルリッヒ「グローバル・エクスプレス」(2011)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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美術館の壁に唐突に現れた車窓。
電車の窓から外を見た映像が流れます。
色々な国の映像を繋げて流しているので、馴染みある日本の景色や、映画で見たことのありそうな海外の景色も見られます。
隣の線路を走る電車の中も…確かにこんな風に見えます。
こういうのも見ちゃうんだよなー。
何も起こらない映像って謎の中毒性があります。
レアンドロ・エルリッヒ「スイミング・プール [模型]」(1999)、「スイミング・プール [記録写真](2014)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
金沢21世紀美術館で展示されている、レアンドロ・エルリッヒ氏の代表作スイミング・プール。
その模型と写真が展示されています。
模型でも下から見るか、横から見るかで趣きが違いますね。
レアンドロ・エルリッヒ「ファニチャー・リフト [模型]」「同 (正面)」「同 (背面)」(2012)
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
写真を見ると、周囲の家と作品がそっくりなことが分かります。
この作品がある状態で、初めてこの街を訪れた人は「この街の引越しってこうなのか!?」と思ってしまうことでしょう。
こういうパブリックアートも多数発表しているそうです。
地球温暖化を表現した溶ける建物とか、良かったですね。
逆に惜しかったところ
①お一人様の居場所がない
2人以上で楽しむようにできてる!!お一人様拒否か!?友達が少ないアートオタクは拒否なのか!?
なんていうか、キャーキャー盛り上がって写真撮ってSNSに上げておしまい、というトレンドに恐怖を感じました。
作者の存在感が薄くなった作品ということですからね…。
複数人で盛り上がるきっかけにはなるけど、アートの力はそれだけじゃないと思うのです。
少しでも良いから、作者が作品に込めた思いを感じたいです。
テーマの表現としては分かりやすいんですよ。
監視社会や地球温暖化への批判的な視線や、そもそも常識をひっくり返すという発想。
まとめ
でも楽しい!ディスってすみませんでした!確かに1人だと楽しみ方に限りがあるように感じましたが、色んな展覧会があるべきだと思います。
弊職は絶妙な恥ずかしさも含めて楽しめましたし。
また、複数人で行くことによって、作品の可能性が広がるというのは面白いです。
たくさん写真を撮って、できることなら作品の意図を考えたい!
レアンドロ・エルリッヒ展、ぜひ行ってみてくださいね!
関連情報
レアンドロ・エルリッヒ展 公式HP図録はこちらです。
2018年1月に発売になったので、展覧会には行ったけど、図録を買えなかった人も多いですよね。
レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル 森美術館 美術出版社 2018-01-19 売り上げランキング : 144091
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ここであえてシンガポールのパブリックアートをおすすめしてみる。
現代アート好きなら探索してみたい国ですよ。
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