ラファエル前派って何だ!?
ウィリアム・ホルマン・ハント「シャロットの女」(1886-1905年)
ウォズワース・アテネウム
ウォズワース・アテネウム
美術史を勉強していると、唐突に出てくる「ラファエル前派」。
印象主義、象徴主義などと違い、横文字だからかな?
文字からイメージが湧かなくて分かりにくいです。
ラファエル?
前??
何のこと???
ってなっちゃう。
しかも、前後の流派が無いんですよね。
○○派が発展して△△派になり、それに反対する形で××派が生まれた…
的な流れが、普通の美術史では解説されないのです。
ポッと出の流派なので、なおさら分かりにくい。
そこで、今回はその辺りをざっくり整理します。
「ざっくり」というのがポイントです!
美術検定対策にもなるはず!
まず、「派」について。
みんな知っていると思うので、ここは割愛します。「派」が何か分からない方はWeblioあたりを見て頂くのが良いでしょう。
次に、「ラファエル」について。
ラファエロ・サンティ「自画像」(1506年)
ウフィツィ美術館
ウフィツィ美術館
ラファエル=ラファエロです。
ルネサンス三大巨匠のラファエロのことです。
こういう絵を描く人ですね。
ラファエロ・サンティ「子椅子の聖母」(1513-1514年頃)
ピッティ宮殿パラティーナ美術館
ピッティ宮殿パラティーナ美術館
ラファエロは、Raffaello Santiと書きます。
イタリア人なので、イタリア語読みで「ラファエロ」と呼ぶのが定着しています。
対して、ラファエル前派はイギリスのムーブメントです。
だから英語読みでラファエル…
って、そうは問屋が卸さないんだなぁ。
Raffaelloは英語でもラファエロですよ。
しかし、Raphaelという俗称があり、イギリスではこちらの方が一般的っぽいです。
「一般的っぽい」と感じるのは、イギリス旅行した際、作品横の解説ではラファエロのことを「Raphael」と書いていたからです。
で、Raphaelは「ラファエル」と読みます。
だから、イギリスのラファエル前派が、ラファエロではなくラファエルを採用したのです。
…書いている弊職本人も訳が分からなくなってきました。
書くほどにラファエルとラファエロの区別がつかなくなっていきますが、皆さんは大丈夫でしょうか?
とりあえず、この画家については、日本人に馴染みのあるラファエロの方で話を進めていきますね。
そして「前」とは?
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス「シャロットの女」(1888年)
テート・ギャラリー
テート・ギャラリー
この「前」が諸悪の根源という気がしています。
分かりにくさの源です。
「前」をつけたのは、「ラファエロ以前」という意味にするためです。
つまり、彼らは「ラファエロ派」ではなく、「ラファエロ以前派」なのです。
ラファエロや、その先輩方を崇拝する流派なのです。
ここまで大丈夫でしょうか?
なぜ、「ラファエロ以前」なのか?
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「プロセルピナ」(1874年)
テート・ギャラリー
テート・ギャラリー
先に「ラファエロ以前」が具体的に誰を指すのか整理しておきます。
・ボッティチェリ
・レオナルド・ダ・ヴィンチ
・ミケランジェロ
・ラファエロ
・ティツィアーノ
だいたいこんな感じです。
彼らが活躍したのは、15世紀〜16世紀です。
で、イギリスの「ラファエル前派」は19世紀中頃〜19世紀末に活躍しました。
彼らは「ラファエロ以降」の芸術を批判した人たちです。
「ラファエロ以降の絵画はクソ!ラファエロ以前サイコー!!」
というわけです。
つまり、具体的には17世紀〜19世紀中頃までの芸術表現に批判的、ということです。
ある意味、彼らがラファエロの時代に芸術は終わってしまったという見方をしていたとも、言い換えられますね。
でも、このムーブメントは長く続かず、たった半世紀で終わってしまいました。
ポッと出てスーッと消えてしまったから、美術史の中で唐突な存在になっちゃったんだなぁ。
こぼれ話。
弊職はラファエル前派の絵が大好きです。アートの定理のトップページビジュアルもラファエル前派の絵です。
ローレンス・アルマ=タデマ「もう何も尋ねないで」(1906年)
個人蔵
個人蔵
ラファエロ以前の絵をお手本に描いたとは思えない独自路線だと思いませんか?
アルマ=タデマが描いた絵は、暇そうで、ダルそうで、やる気が無さそう。
時間をただただ無駄にするような生き方(褒め言葉)、できるものならしてみたいです。
弊職は性格的に無理です。
動いてないと死んでしまう。
また、シェイクスピアの物語に影響された作品も、ルネサンスの画家には書けない主題ですよね。
ジョン・エヴァレット・ミレイ「オフィーリア」(1852年)
テート・ギャラリー
テート・ギャラリー
ミレイのオフィーリアは、「ハムレット」のヒロインです。
悲劇のヒロインにふさわしい可憐な美しさだと思います。
まとめる。
強引にまとめると、「ラファエル前派」とは、「ラファエロ以前の芸術」を尊敬しまくる流派のことです。でも、ラファエロたちルネサンスの巨匠とは違う路線を行き、決して真似ではないことが重要です。
それでいて、ムーブメントが短命に終わっているところが憎めないです。
少女趣味な部分もあり、甘ったるいだけのところもありで、世界的に大人気の流派ではありません。
でも、物凄いスピードで生きる現代人こそ見るべき絵画です。
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