バロック美術について。

バロックとは、歪んだ真珠のことです。
ひずんだ真珠ではなく、ゆがんだ真珠です。

17世紀に流行した芸術のスタイルですね。
15〜16世紀はルネサンスなので、そのすぐ後です。

それではここで、バロックを代表する画家ルーベンスの作品を見てみましょう。

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ピーテル・パウル・ルーベンス「レウキッポスの娘たちの略奪」(1616-1618年)
アルテ・ピナコテーク

どこが真珠!?

凄い躍動感!
落ちてるの?浮いてるの?
次の瞬間、どんがらガッシャーン!とみんなが崩れて重なり合う様が想像できます。
真珠の儚く可愛らしい雰囲気は全くありません。

そう、バロックとは「お行儀良いルネサンス芸術」というをぶち破った、新しい流派なのです。
バロックには「規格外」という意味もあるそうで、納得です。

「躍動感」といえば我らがミケランジェロですね。
実は、バロック的な作品を最初に作ったのはミケなのです。
ミケといえば、ルネサンスの三大巨匠
あれ、バロックからルネサンスに戻ってきた…。

語ると長くなるから、今回はやめておきますけれども。
今回は、既存の絵画様式をぶち壊して衝撃を与えた、千差万別のバロック絵画を紹介します!


イタリア

バロック様式が一番早く生まれたのがイタリアです。
イタリアと言えばルネサンスの発祥ですね。
ルネサンスに飽きるのも早かったと言うことでしょうか。

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カラヴァッジョ「バッカス」(1595年頃)
ウフィツィ美術館

イタリア代表選手はカラヴァッジョです。
光と闇のコントラストがキツく、夜っぽいですね。
果物の実りと少年の頬の色づきがリンクして、ドキドキする絵です。
差し出している飲み物が怖い…絶対、毒入ってるよね。

こういった、明暗の強烈なコントラストはバロックの特徴の1つです。
はい、ここテストに出まーす!

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カラヴァッジョ「ホロフェルネスの首を斬るユディト」(1598-1599年)
国立古典絵画館

もう1枚カラヴァッジョ。
今度は登場人物が3人で、女性が男性の首を剣で斬っています。

うえっ、気持ち悪っ。
見ている人まで首が痛くなってくるし、喉から何か飛び出しそうになります…。

リアルの追求とは、程遠い作品なんだけどなぁ。
まず、首の出血が誕生日パーティーのクラッカーみたいに真っ直ぐ飛んでるのはおかしいです。
女性は一応顔を歪めてはいるけど、人首をゴリゴリやるときはもっと力入れなきゃダメでしょ。
リアルよりもドラマを優先した絵画です。

バロックのもう1つの特徴は、大げさな構図や大げさな表情です。
はい、ここもテストに出ます。

良く言えば大胆、悪く言えばトゥーマッチなのです。
芝居がかっていて、大げさな演劇みたいなところが、よくハリウッド映画に例えられます。


フランドル(ベルギー)

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ピーテル・パウル・ルーベンス「キリスト昇架」(1610-1611年)
アントウェルペン大聖堂

フランドル代表はミスター・ハリウッドルーベンスです。
構図が物凄く大げさなんですが、こんなに人手が必要なのでしょうか?
キリストを持ち上げるだけなのに、なぜか大勢がわちゃわちゃしてます。

あと、なぜか彼の絵に出てくる人たちはムキムキでやたら重量感があります。
キリストなんて痩せ細って描かれるのが普通なんですが…。
なんとなく、ミケランジェロの影響を受けていそうな気がします。


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ピーテル・パウル・ルーベンス7キリスト降架」(1611-1614年)
アントウェルペン大聖堂

降ろす方はちょっと穏やかですね。

ルーベンスの凄さは、完璧な構図だと思います。
例えば本作の場合、右上から左下に向かって絵画の背骨が通っていて、その流れを目で追ってしまいます。
他の絵でも、直線背骨がきちんと全体をまとめているのです。
だから、ハリウッド的なわちゃわちゃが、きゅっとまとまるんだなぁ。

ところで、絵画の背骨って表現、分かりやすくないですか?
唐突に思いつきました。


北ネーデルラント(オランダ)

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レンブラント・ファン・レイン「夜警」(1642年)
アムステルダム国立美術館

弊職がカラヴァッジョの次にバロックっぽいと思うのはレンブラントかな。
光と闇の対比が激しくて、闇の中から浮き上がるような絵がバロックっぽいと感じます。

夜警はやっぱり傑作。
対角線状に旗や槍が伸びてるので、これが背骨になって全体を支えています。
背骨って表現、ほんと便利だな。

白い服の少女だけが浮かび上がって見えるんですけど、彼女は何でしたっけ?
美の巨人たちで見た記憶があるんですけど、忘れましたね。


2018-01-06-15-07-36
ヨハネス・フェルメール 「牛乳を注ぐ女」(1657-1658年頃)
アムステルダム国立美術館

フェルメールも、実はバロックにカテゴライズされる画家です。
あんまりバロックっぽくないとは思うんですけどね。
ハリウッド映画とは真逆の、穏やかな絵が多い印象です。
ミニシアター系かな。

ただ、光の表現は「規格外」です。
フェルメールの絵って闇が濃いわけではないのに光が光って見えるんですよね。
他の誰もやっていない技法で、オリジナル路線の人なのです。

2018年10月から上野の森美術館でフェルメール 展が開催されます。
弊職の出品作品予想はこちらから。



スペイン

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ディエゴ・ベラスケス「ラス・メニーナス」(1656年)
プラド美術館

この絵は色んな意味で有名ですね。
鏡に国王夫妻が映ってるとか、ベラスケスが描いているのは鑑賞者の立ち位置にいる国王夫妻だとか。

でも、ベラスケスが描いているのは真ん中の王女だという見方もあったし、色々な解釈ができるのです。
謎が謎を呼ぶトリッキーな絵です。

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ディエゴ・ベラスケス「鏡の前のヴィーナス」(1648-1651年)
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

これは恥ずかしながら最近知った絵です。
背中を向けて横たわるヴィーナスの顔が、鏡に映っています。
ベラスケスは鏡が好きなんですね。

しかも、ヴィーナス本体は本当の肌のように滑らかな筆遣いで描かれているのに対し、
鏡に映った顔はザザッとアバウトにぼかされています。
これまたトリッキー意味深

ベラスケスは絵の中にオリジナルのストーリーを込める画家だと思います。
意味深だと感じるものの、正解のストーリーが分からないミステリアスな画家なのです。
トリッキーなところは「規格外」な感じがするし、確かにバロックです。


バロックはなぜ流行したのか?

ここで明菜氏の見解を…と行きたいところですが!
今日はもう十分長くなってしまいました。
続きは明日!

追記:続編はこちら!


関連情報

2018年はバロックイヤーらしく、この頃の作品が見られる展覧会がたくさん始まります。
各公式HPのリンクを貼っておきますね。
プラド美術館展
フェルメール展
ルーベンス展

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