試着室の鏡はなぜか太って見える。

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この前、服を買いに行ったんですよ。 試着して全身が映る鏡を見たら、びっくり。 あれ? 私、こんなに太ってたっけ? 服のことなんか、もうどうでも良くなっちゃって。 顔でかっ! 肩幅ひろっ! 脚みじかっ! で、あります。 でもね、美術ブロガー明菜にはすぐに理解できました。 これが目の錯覚だと言うことを。 ルネサンスから使われる錯視トリックとの繋がり、見つけちゃったわよ。

なぜ、試着室の鏡は太って見えるのか?

物体は「近づけば大きく、離れれば小さく」見えます。 遠近法ですね。 だから、試着室のように狭いところで鏡に近づいた場合、太って見えるのです。
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鏡に近い所から全身を見ざるを得ないので、図のような状態になります。 顔は近く、脚は遠いのです。 「近づけば大きく、離れれば小さい原理」に照らせば、 顔→大きい 脚→小さい となって、上半身が大きく下半身が小さいちんちくりんに見えます。
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試着室の鏡って本当にこんな風に見えるんですけど、これは目の錯覚なわけです。 ただの遠近法です。 逆に鏡から離れれば、太って見える現象は薄まります。
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この距離では十分とは言い難いけど… ・目と顔の距離 ・目と脚の距離 の差が縮まってきました。 鏡と距離を取った方がスタイルがよく見える! ということが分かりますね。

「試着室の鏡は太って見える現象」を応用した美術作品

例えば、ミケランジェロのダヴィデ像。
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ミケランジェロ・ブオナローティ「ダヴィデ」(1504年) アカデミア美術館
この作品、頭が妙に大きいのですよ。 下から見上げて鑑賞することを前提にしていたため、普通に作ると下半身が大きく、上半身が小さく見えてしまいます。 これを解消するため、ミケランジェロは頭をあえて大きくしました。 これによって、下から眺めると理想のバランスの人体に見えます。 ミケランジェロの肉体愛が成した芸術ですね! 絵でも、同じことができます。 サンティニャツィオ教会の天井画を見てみましょう。
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アンドレア・ポッツォ「聖イグナティウスの栄光」(1685年)サンティニャツィオ教会 CC BY-SA 4.0 by Livioandronico2013
天井が高いところにあって、壁がありますねー。 って、これ、壁の部分も含めて1枚の天井画ですからね! 平面ですよ! 騙し絵のカテゴリーですね。 とても自然な奥行きで、空間が広く感じられます。 これも、基本的には近いものを大きく、遠いものを小さく描く遠近法で描かれています。 びっくりなのは、ダヴィデを作ったミケランジェロも、サンティニャツィオ教会の天井画を描いたポッツォも、数百年前にこれを成し遂げたこと。 ミケは15〜16世紀の盛期ルネサンス、ポッツォは17世紀のバロックを生きた芸術家。 21世紀の現代人の誰もが経験する「試着室の鏡は太って見える現象」を通して、ルネサンスやバロックの巨匠との繋がることができるのです。 これって凄くない?

まとめる。

私が太って見えたのは錯覚だ! むしろ痩せている!! まだまだ食べられる!!! 甘いものを持ってこい!!!! Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加

関連情報

ミケランジェロと理想の身体展では、「ダヴィデ=アポロ」「若き洗礼者ヨハネ」の2つのミケ作品を見られます。 国立西洋美術館で9/24まで。 アートの定理ではダヴィデ=アポロを特集。 楽活ではミケの天才らしいおもしろエピソードを紹介しました。 騙し絵といえばエッシャー! 人を騙そうとして描いていたわけではないんだよな… 芸術と向き合う孤独なエッシャーの姿を見ました。 上野の森美術館で7/29まで。 これも楽活に寄稿しました。 すごくテンションが高い。 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新の展覧会情報はこちら。 今月の展覧会 今までに行った展覧会一覧 ただいま、ツイッターの情報発信を強化中。 ブログ更新情報はもちろん、最新のアートニュースもお届けします。 インスタグラムも。 1人でアート大喜利やってます。 明菜氏のインスタ 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします! にほんブログ村 美術ブログ いろいろな美術・アートへ
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