ルーベンス展 主観レビュー。

「フランダースの犬」でネロとパトラッシュが最後に見た絵でおなじみのルーベンス。 ベルギーの巨匠の大展覧会「ルーベンス展ーバロックの誕生」が、国立西洋美術館で始まりました!
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ペーテル・パウル・ルーベンス《エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち》(1615-16年) ファドゥーツ/ウィーン、リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
と思ったら、本展は 「ルーベンスをイタリアの画家として紹介する」 とのこと。 アグレッシブ! 当時は美術も政治もイタリアが中心でしたからね。 ベルギーのルーベンスも実は23歳から31歳までイタリアで美術の修行をしていたのです。 瀕死のキリストのムキムキさよ…
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ペーテル・パウル・ルーベンス《キリスト哀悼》(1612年頃) ファドゥーツ/ウィーン、リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
確かにルーベンスはイタリア・バロックの影響を受けまくってるなぁ。 バロックは大げさでドラマティックな表現が特徴なのです。 奥行きの表現も素晴らしい。 飛び出す立体感ではなく、奥のブツを奥に引く技術です。 トリックアート的な表現は、まさしくバロック時代のもの。
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ペーテル・パウル・ルーベンス《スザンナと長老たち》(1611年以前) サンクトペテルブルク、エルミタージュ美術館
しかし、ルーベンスの絵ばかりを見ていると何が凄いのか分からない状態になりますね… 感覚がマヒしちゃう。 他の画家の作品と並んだときに初めてルーベンスの凄さが分かるの。 例えばルーベンスの《パエトンの墜落》です。 隣にはルカ・ジョルダーノ《パトモス島の福音書記者聖ヨハネ》がありますが、全然違うもん。 ジョルダーノの方がサイズが大きいのに、ドラマで負けてる。
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ペーテル・パウル・ルーベンス《パエトンの墜落》(1604-05年頃、おそらく1606-08年頃に再制作) ワシントン、ナショナル・ギャラリー
ぱっと見では誰が主役か分からないし、どんな場面を描いたか分からないんですよ。 1人1人を目で追って、タイトルが《パエトンの墜落》であることを考えると、ようやく物語が見えて泣きました。 全員が主役で光が当たってるのも良いし、全体を俯瞰させる構図も好き。 「全体を見てくださいね」と言いながら、右上から差し込む光に目が誘導されるのも好きだ。
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ペーテル・パウル・ルーベンス《法悦のマグダラのマリア》(1625-28年) リール美術館
これも泣いた。 肌は完全に死体の白だし、口や鼻も死んでます。 でも目だけ生きてる!怖い! 手前にある頭蓋骨らしきものもトリッキー。 頭蓋骨を倒し、顎を手前に、脳を後ろに置いてあるんです。 解剖学に精通しているアピール。
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ペーテル・パウル・ルーベンス《マルスとレア・シルウイア》(1616-17年) ファドゥーツ/ウィーン、リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
この絵のマルスさんは可愛い。 被っていた兜をほいっと投げ捨てて美女に駆け寄るのに、キューピッドが 「兜、落としたよー!」 みたいに追いかけてくる感じが好きです。 物語のヒントを散りばめた絵は、想像が膨らんで楽しい。 西洋美術館の常設展で人気の作品も出てました。 天使のような2人の赤ちゃんに癒された人も多いはず。 よそから借りてくるだけでなく、コレクションも活用できるのは西美の強みです。
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ペーテル・パウル・ルーベンス《眠るふたりの子供》(1612-13年) 東京、国立西洋美術館
20代のほとんどを美術の国イタリアで過ごしたルーベンス。 この時期に受けた衝撃は、人生に大きな影響があると思うんですよね。 私は27歳で、イタリア時代のルーベンスと同じくらい。 彼にとってイタリアがどれほど刺激的だったか、私の目線でも共感します。
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ペーテル・パウル・ルーベンス《クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像》(1615-16年) ファドゥーツ/ウィーン、リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
展覧会に行く前、ブログの締めは 「ネロとパトラッシュのように、ここで力尽きて眠っても良い…」 と決めていました。 しかしルーベンス展で泣いた後、生きる気力がジャバジャバ湧いてきた! 私、生きる! ルーベンスのように20代で色んな物事を吸収するのだ! Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ルーベンス展のグッズと値段は別記事でまとめました! コラボのパン「クララのほっぺ」も美味しかった。

展覧会基本情報

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展覧会名:ルーベンス展ーバロックの誕生 場所:国立西洋美術館(最寄駅:上野) 会期:2018年10月16日〜2019年1月20日 休館日: ・月曜日(ただし12月24日、1月14日は開館) ・2018年12月28日(金)~2019年1月1日(火)、1月15日(火) 開館時間:9:30~17:30 毎週金・土曜日:9:30~20:00(ただし11月17日は9:30~17:30まで) ※入館は閉館の30分前まで 所要時間:2時間 観覧料:一般は1600円 公式HP:http://www.tbs.co.jp/rubens2018/

関連情報

今回のルーベンス展に合わせ、美術初心者も楽しめるガイドブックが出てます。 今、もっとも信頼できるアートブロガーのTakさん、はろるどさんもコメント書いてるし、おすすめ。 しかも、ジャケ買いしたくなる表紙ですよね。 同じく上野では、バロック時代のオランダの巨匠フェルメール展が開催されています。 引き算の美学はルーベンスと対照的なので、同時に見たら感動が増しますね。 上野の森美術館で2019年2月3日まで! これまた上野の東京国立博物館では、マルセル・デュシャン展が開催中です。 ルーベンス展はそこそこ、フェルメール展は激混みの中、デュシャン展はガラガラです。 人混みに疲れたらこっちだ! というか、とてもおすすめの展覧会だから皆さん行きましょう! おすすめ展覧会は他にもたくさん。 芸術の秋は美術館めぐりというスポーツの秋でもあるのだ。 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新の展覧会情報はこちら。 今月の展覧会 今までに行った展覧会一覧 ただいま、ツイッターの情報発信を強化中。 ブログ更新情報はもちろん、最新のアートニュースもお届けします。 インスタグラムも。 1人でアート大喜利やってます。 明菜氏のインスタ Instagram 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします! にほんブログ村 美術ブログ いろいろな美術・アートへ
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