布施英利「わかりたい!現代アート」を読みました。

FullSizeRender
マルセル・デュシャン《泉》(1950年(レプリカ/オリジナル1917年)) フィラデルフィア美術館
東京国立博物館マルセル・デュシャン展が開催されています。 同じ時期にフェルメール展、ルーベンス展、ムンク展と上野は大変なことになっているのに、 天下のトーハクはまさかのデュシャン展です。 正気でしょうか。 マルセル・デュシャンは現代美術の父と呼ばれる人。 悪い言い方をすれば、分かりにくく難しい現代アートの父です。 そんなデュシャンを起点に、現代アートの見方を解説した本を読みました。 布施英利さんの「わかりたい!現代アート」です。 文章が丁寧で読みやすかった! 文庫本なので、お勉強っぽくないサイズ感なのも良いですね。

良いところ①現代アートになぜ価値があるのかわかる!

IMG_2102
デュシャンの泉がどんな価値を持つのか? ってことも含め、「なぜこれが芸術なの?」と疑わざるを得ない作品はたくさんあります。 たとえば、バーネット・ニューマンの絵。 横長の長方形のキャンバス一面を青で塗りつぶし、真ん中に垂直な白い線を1本引いただけの絵です。 この絵、なんと44億円で売れてます。 44億円! なんて羨ましい! 1本の直線で遊んで暮らせる大金が手に入るとは。 本の中で「これで良いなら自分にも描ける」と希望に満ちた目で言ったサラリーマンに触れているとおり、簡単に描けそうな絵ですよね。 なぜ44億円もの値段で売れたのか、さっぱり分かりません。 ニューマンの絵を解説するために、布施さんはモンドリアンに遡り、ギュスターヴ ・モローレオナルド・ダ・ヴィンチとどんどん遡っていきます。 現代アートとレオナルドが繋がるんです。 凄くない!? 現代アートは作品1個だけで理解できないことが多く、歴史の文脈を紐解いてこそ面白さが分かります。 そうして紐解いて行った結果、16世紀の画家レオナルドに辿り着くって面白い! やっぱり面白いよ、現代アート!

良いところ②タイトルが「わかりたい」

IMG_2106
本のタイトルは「わかりたい!現代アート」であって、「わかる!現代アート」ではないのです。 「これさえ読めばわかる!」といった誇大広告な本が多い中、謙虚な姿勢ですよね。 著者の布施さん自身も、分かったと思ったらまた次の謎が出てくる状態ではないでしょうか。 本の随所に「布施さん流の見方」が書いてあるこがその証拠。 本書のキャッチコピーは 「わからないから、つまらない」ではなく「わからないから面白い」 です。 この言葉のとおり、解釈を押し付けるのではなく、布施さんが感じたとおり、考えたとおりの説明をしてくれるのです。 そもそも、どんな時代のアートであっても、作者の思いは作者にしか分かりません。 現代アートは特にその傾向が強いから、分かりにくく感じられているのです。 だから、アートにおいては「わかる」ことより「わかろうとする」ことの方が偉いのかもしれません。 そう感じさせてくれる本でした!

良いところ③Chim↑Pomに振り仮名がある!

本書は会田誠さん名和晃平さんなど現役のアーティストまで解説しているところが凄い。 2005年から活動するパフォーマンス集団Chim↑Pomまで解説しており、最新の現代アートを網羅しているのです。 パフォーマンスアート集団のChim↑Pom。 その名前をSNSやネットニュースで目にすることが増えてきました。 しかし、ネットニュースには載る割に、音声メディアで取り上げられることが少なく感じます。 だから読み方が分からないまま…な人はいませんか? そのまま読んだら「チンポム」だし、たぶんこれで良いのだろう… 他に読みようがないし… でも万が一違ったら… なかなか恥ずかしいサウンドです。 本書でChim↑Pomが最初に登場するときは、ルビが「チンポム」と振ってあります! 意外とこういう本が無いんですよ! 振り仮名を書いているだけで賞賛したくなるほど、他の本では書いてないんです。

残念なところ:作品画像を掲載してほしい

表紙の絵・挿絵を手がけたのはTYM344さん。 もともと美術史に残る有名な絵画のパロディを手がけていたので、布施さんの文章とのコラボは理解できるけど… 本物の作品の画像がほとんど無いって、どういうこと? 布施さんが言及する現代アート作品を知らない人は、ネットで調べないと布施さんが何を言っているのかチンプンカンプンなのです。 美術について語るなら、作品の画像が無いと伝わらないでしょう… TYM344さんの作品も良いし、それはそれで載せてほしい。 本物の作品もあれば、更に分かりやすくなったんじゃないかな。

まとめ

布施英利さんの「わかりたい!現代アート」は現代アート初心者におすすめの本! 現代アートの見方は人の数だけ存在するので、この1冊で完璧に理解することは難しいです。 しかし、現代アートの解説本って、簡単なことを難しく言ったような専門家気質の本が多いんですよね… あとは、日本語が不自然な翻訳本とか。 そんな中、現代アートについてここまで気軽に読めることが凄い! しかも、会田誠さん、名和晃平さん、Chim↑Pomなど最新の芸術家まで網羅しています。 東京国立博物館のデュシャン展を見たあと、現代アート全体を学ぶのにぴったりの本でした! Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加

関連情報

今回は現代アートに特化した分かりやすい本を紹介しました。 美術史全体、それも西洋・日本両方で、初心者向けの本はこれかな。 アートブログ青い日記帳のTakさんの本です。 普段のブログと同じで、とても読みやすいです。 デュシャン展、ガラガラだったけど良かったです! 解説が丁寧なので、作品を通してデュシャンが伝えたかったことが分かるようになってます。 東京国立博物館で12月9日まで! デュシャン展はガラガラだけど、ルーベンス展やフェルメールは混み混みです。 やっぱりネームバリューなんですかね… 確かにどちらも良かったです。 ルーベンス展は並ばないで入れるレベルでした。 国立西洋美術館で2019年1月20日まで! フェルメール展といえば、フェルメール会議! 私が初めて関わらせて貰った本です。 全作解説を半分くらい執筆しました。 頑張って調べたので、フェルメールの知識だけがアンバランスに身についています。 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新の展覧会情報はこちら。 今月の展覧会 今までに行った展覧会一覧 ただいま、ツイッターの情報発信を強化中。 ブログ更新情報はもちろん、最新のアートニュースもお届けします。 インスタグラムも。 1人でアート大喜利やってます。 明菜氏のインスタ Instagram 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします! にほんブログ村 美術ブログ いろいろな美術・アートへ
にほんブログ村