岩崎貴宏「Layer and Folding」 主観レビュー。

ハードカバーの本って、紐状のしおりが付いていますよね。 何度も使っているうちに解けてきて、もわもわするのが嫌なんですけど… 私は本を買ったらすぐに、紐の先端をボンドで固めてしまいます。 こうすると解けないので、いつまでも紐の部分が新品状態なんですよ! しかし、この解ける性質を利用したアート作品に出会ってしまいました。 皆さんも絶対「何コレ!?」って言うと思う!
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岩崎貴宏《テクトニック・モデル(Kopfkissenbuch Sei Shonagon)》(2018年)
一見、ただの本なんです。 本が仰々しいケースに入ってるだけなの。 でも、近づくと…
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岩崎貴宏《テクトニック・モデル(Kopfkissenbuch Sei Shonagon)》(部分)(2018年)
「何コレ!?」でしょ? これヤバくない? ヤバいよね? 本のしおりの紐を解いて出てきた細い糸を使って、クレーン車を組み上げてしまいました。 んー、これは狂ってる。 素晴らしい。
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岩崎貴宏《テクトニック・モデル(震美術論)》(2018年)
この作品を作ったのは、岩崎貴宏さん。 銀座シックスの蔦屋書店のイベントスペースで、個展が開催されています。 椹木野衣さんの震美術論は蔦屋書店でも平積みされてるし、欲しくなっちゃうよね。 岩崎さんの芸当はマネできないけど、なんとなく本への見方が変わるじゃない?
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岩崎貴宏《テクトニック・モデル(震美術論)》(部分)(2018年)
岩崎さんは1975年に広島県に生まれ、広島市立大学で博士課程を修め、イギリスに留学。 2018年にはエジンバラ・カレッジ・オブ・アートから名誉博士号を受位されたとのこと。 2017年のヴェネチア・ビエンナーレにも日本代表で出ているし、世界で活躍している作家さんなのです。
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岩崎貴宏《アウト・オブ・ディスオーダー Layer and Folding (01)》(部分)(2018年)
いや、だって、本当にすごいもん! 今回は本のしおりの小さい作品だけでなく、大きな作品も展示されています。 地層のように積み上げた様々な布。 ふわふわだったり、つるつるだったり、色んな素材のものが積み上がっています。
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岩崎貴宏《アウト・オブ・ディスオーダー Layer and Folding (02)》(部分)(2018年)
これも布から糸を紡ぎ出して電線や鉄塔を作り上げています。 なんてカッコいいんでしょうか。 「ああ…」って声が漏れてしまいます。 よく見ると、綿棒とか、歯を掃除する糸ようじピックなんかもあります。 全部黒だからカッコいいんだけど、よく見ると身の回りの取るに足らないものばかり。
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岩崎貴宏《アウト・オブ・ディスオーダー Layer and Folding (01)》(部分)(2018年)
使っては捨てられる日用品で、郊外の寂しい風景を作る。 「ノスタルジー」と言うには勿体ないくらい、心をきゅーんと摘む風景なんです。 私たちの日常の消費活動と、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返して発展する都市とが結びつきました。 ゴミ箱の中のゴミたちが反抗してデモを起こしているような気分。
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岩崎貴宏《アウト・オブ・ディスオーダー Layer and Folding (03)》(部分)(2018年)
スクラップ・アンド・ビルドとは、老朽化した建物を壊して新しく立て直し、都市の能率を良くすること。 それは華々しく店頭に並べられては消費される日用品と同じライフサイクルです。 光ある場所の裏には、必ず影ができます。 岩崎さんの作品は、その影だけを取り出したようで。
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岩崎貴宏《アウト・オブ・ディスオーダー Layer and Folding (05)》(部分)(2018年)
影に焦点を当てると言えば、本のしおりの作品は白い壁に影を落としています。 この繊細な影…伝わるかな?
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岩崎貴宏《テクトニック・モデル(History of Art in Japan)》(2018年)
会場が明るいので、薄く溶けそうな影ができています。 なんて繊細な仕事! 皆さんも、本棚に置いている本たちへの意識が変わるはず。 岩崎さんの作品を見たら、身の回りのものが愛しくなるよ。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加

展覧会基本情報

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展覧会名岩崎貴宏「Layer and Folding 場所:銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM 会期:2018/12/27〜2019/1/14 開館時間:10:00-22:30 所要時間:30分 観覧料:無料 公式HP:https://store.tsite.jp/ginza/

関連情報

椹木野衣さんの「震美術論」など、アート関係の本が岩崎さんの作品になってました。 銀座蔦屋書店がアート押しなのを踏まえた展示です。 糸を解いた作品で、岩崎さんの他に思い浮かんだのが平野薫さん。 傘を解いた後にできる糸のヨレをアートにした作品です。 同じ「解いた糸」でも、作品化の可能性は無限なんだなぁ。 平野さんはポーラ美術館で拝見しました。 商業施設の展示は年末年始もやっててありがたいですよね。 六本木ヒルズのギャラリーも、年末年始オープンしてるそうですー。 銀座シックスの蔦屋書店は、書店としても展示スペースとしても大好きです。 同じ場所で、前回は野原邦彦さんが個展を開いていました。 ふわふわした素材だと思っていたら、カチカチの木彫だったのでビックリぽんよ。 (野原さんはアートの定理おもしろいって認めてくださったんですよ!) 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新の展覧会情報はこちら。 今月の展覧会 今までに行った展覧会一覧 ただいま、ツイッターの情報発信を強化中。 ブログ更新情報はもちろん、最新のアートニュースもお届けします。 インスタグラムも。 1人でアート大喜利やってます。 明菜氏のインスタ Instagram 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします! にほんブログ村 美術ブログ いろいろな美術・アートへ
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