猪瀬直哉「Blue」 主観レビュー。
昔のブラウン管のテレビって、放送が無い時間帯になぜかカラフルな縦縞が出てましたよね。 子供の頃には不快感を覚えました。 楽しいテレビ番組が終わった後、急に「楽しみ方が分からない抽象画」が出てくるんですよ。 なぜそんなことを思い出したかと言うと、この違和感をテーマにした作品を見てしまったからです。猪瀬直哉《Abstract paintings》(2018年)猪瀬直哉さんの個展にて。 …メインの展示がカラーバーというわけではないんですけれども。 大きな作品の間に、小さなカラーバーの作品が置いてあるんですね。 カラーバー作品を大々的に発表するのは今回が初めてなのだそうです。展示風景展示の構成上、カラーバーが必要ということになって置いたとのこと。 これ、絶対あった方が良いよね。 「映画は受け身でも楽しいけど、美術は能動的に考えないと楽しめない。だからファンが少ない」 とはよく言われること。 だけど、絵画でも「受け身でも何とか楽しめるやつ」と「受け身では絶対ムリなやつ」とがあるんです。 猪瀬さんの個展は、そのメリハリが出ていて面白かった!猪瀬直哉《THE COURSE OF EMPIRE》(2010年)「受け身でも何とか楽しめるやつ」っていうのは、こういう系のこと。 写真のような…というか、風景画らしい風景画。 トマス・コールという19世紀のイギリスの画家が描いた《帝国の推移》シリーズの「荒廃」のオマージュです。 もはや模写のようにも見えるのですが… よく見ると、隠しロゴが散りばめられています。猪瀬直哉《THE COURSE OF EMPIRE》(部分)(2010年)インターネットエクスプローラーのeや、再生マークの三角形。猪瀬直哉《THE COURSE OF EMPIRE》(部分)(2010年)本家の《帝国の推移》シリーズは、自然を開発して都市を作り、一時は人が増えて盛り上がるものの、徐々に衰退して廃墟になる様を描いた連作です。 よくある歴史の繰り返しではあるものの、猪瀬さんはデジタルのイメージを重ねました。 電子ゴミしか残らない世界ってどんな場所なんだろう?猪瀬直哉《Almost home 2》(2018年)個人的にはペンギンが出てくる絵が気に入りました。 ペンギン好きだからね。 猪瀬さんの絵にはペンギンがよく登場するそうです。 ペンギンは南極で身を寄せ合ってコロニーを作り、吹雪に耐える生き物。 内向きな日本人の性格と似ている感じがするらしく、 私たちとペンギンを重ねているのだそう。猪瀬直哉《Almost home 2》(部分)(2018年)プールも似たような意味で描かれます。 誰も泳いでいないし、波風も立たない平穏なプール… 平穏に見えるけれど、実は雑菌とか凄いからね、プールって。 私は日本のテレビの「日本人がいかに素晴らしいか外国人にインタビューする」企画が苦手です。 猪瀬さんがプールを描く意味を知ったとき、私の密かな同族嫌悪と繋がって怖かったです。猪瀬直哉《Polylith into the blue》(2018年)奥行きが機械的で、人間が登場しない冷たさがあって… RPGゲームからキャラクターを排除したような虚無の世界。猪瀬直哉《Untitled》(2018年)絵と向き合ったとき、自分が虚無の世界に取り残されたような気持ちになりました。 そこに、抽象的なカラーバーが挟まれるのよ。 分かります?この気持ち。展示風景猪瀬直哉さんの個展、1人の作家が描いたとは思えない絵の幅で、見ごたえありでした。 抽象画のトラップにはまってみて! Share!▶︎Tweet展覧会基本情報
展覧会名:猪瀬直哉 Blue 場所:THE CLUB(銀座) 会期:2018/12/1〜2019/1/31 開館時間:11:00-19:00 所要時間:30分 観覧料:無料 公式HP: http://theclub.tokyo関連情報
銀座シックスはすっかりアートスポットになっています。 本のしおりの紐を解いて工作した岩崎貴宏さんの展示も同じフロアでやってます。 こっちも必見! 1月14日までです。 過去の展示も良いやつが多くて… 蔦屋書店のスペースでは、木彫の野原邦彦さんが公開制作をしてました! THE CLUBも過去にステキな展示をやってきました。 入り口の雰囲気がとても入りにくいのだけど、勇気を出して入ってみて! 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新の展覧会情報はこちら。 今月の展覧会 今までに行った展覧会一覧 ただいま、ツイッターの情報発信を強化中。 ブログ更新情報はもちろん、最新のアートニュースもお届けします。 明菜(アートの定理)をフォローする インスタグラムも。 1人でアート大喜利やってます。 明菜氏のインスタ 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします!
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絵の幅が超人!猪瀬直哉「Blue」はキャラの無いRPGのような虚無の世界