『半澤友美「The Histories of the Self」展』主観レビュー。

ポーラ美術館のエスカレーターを降りる最中、驚きましたね!
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展示風景
今回の「アトリウム ギャラリー」での展示は、壁や床を覆い尽くすように展示された『紙』でした! 半澤友美さんの「The Histories of the Self」展です。 約300枚もの紙がインスタレーションとして展示されています。 300枚にも上る量の紙が、手作りされているのです。
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ギャラリートークで制作について解説する半澤友美さん
まず、遠目から見たときには『布』かと思ってしまいました。 穴が空いたりヨレたりした布かと。 写真で見るとサラミっぽい感じもあるし、初見で『紙』と思えないのではないでしょうか? 一般的な紙の作り方とは違う制作方法で、私が見ても「紙の概念を超えているのでは?」と思ってしまいました。
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展示風景
普通、1枚の紙は平らでなければならないし、同じ品質のものを早く大量に作る必要がありますよね。 四角いザルのようなものを使って1枚の紙を作る「紙すき」の光景は、ときどきテレビなどで目にします。 半澤さんが今回の展示で作った紙は、ある意味で『真逆』とも呼べる製法ではないでしょうか。 植物の繊維が溶けた原料をスポイトでポタポタと垂らし、1枚1枚の紙を作っています。
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制作の紹介ムービー
普通の「紙すき」は1枚の平面を一気に作るのに対し、半澤さんは少しずつ平面を作っていきます。 ポタポタ垂れた原料にはさまざまな色がつけられているので、みずみずしいツヤが宝石のよう。 ですが、実際に完成した紙は少しくすんだ色をしていて、物悲しさを帯びてはいませんか? 色鮮やかで透明感のある原料から、くすんでノスタルジーを感じさせる紙ができるのです。 見る人に、時間の経過や記憶が薄れていく様を考察させるような作品です。
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制作の紹介ムービー
制作工程の映像を見ていると、色の変化以上に、その果てしない作業を実感することができます。 1枚の紙を作るのに膨大な時間がかかっていることは一目瞭然です。 その間、半澤さんも制作のことだけを考えているわけではないと思うんですよね。 手を動かしながら、過去の記憶を手繰ったり、未来への不安感に想いを馳せたり、色々なことを考えていると思うんです。
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展示風景
私にはそんな時間あったっけ?というのが素直な気持ちです。 アーティストであってもなくても、じっくり自問自答できる時間を持っている人は少ないのではないでしょうか。 贅沢な時間の使い方だと思います。 目に見えないレベルで有機的に絡まる紙の繊維は、私たちの脳のニューロンと似ているのではないかと思います。 1人の人間の生い立ちや思い出などすべてが脳の中にストックされているので、紙もそういう存在なのかもしれません。
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展示風景
繊維の絡まりによって1つの平面を作るものの、厚いところ・薄いところのムラがある紙。 そもそも、どんな植物を使って紙を作るかは地域や文化によって異なります。 人生と言っても良いような…『紙生』と呼ぶのが合っている気がします。 レッドカーペットのように敷かれた紙を見つめながら、自分を見つめる時間が欲しいと思いました。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加

展覧会基本情報

展覧会名:半澤友美「The Histories of the Self」展 場所:ポーラ美術館(箱根) 会期:2019/8/10-12/1 ※会期中無休 開館時間:9:00-17:00(最終入館は16:30) 所要時間:30分 公式HP:https://www.polamuseum.or.jp

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現代アートの紹介にも力を入れていますが、ポーラ美術館はコレクションの西洋美術がめちゃめちゃ凄い。 ポーラ美術館では、同時に『シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート』が開催されています! 現代アートといえば、東京都現代美術館もおすすめ。 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新の展覧会情報はこちら。 今月の展覧会 今までに行った展覧会一覧 ツイッターでは、ブログに載せていない写真も掲載しています! インスタグラムも。 1人でアート大喜利やってます。 明菜氏のインスタ Instagram 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします! にほんブログ村 美術ブログ いろいろな美術・アートへ
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