『円山応挙から近代京都画壇へ』主観レビュー。

「名作」が時折見せる尋常じゃないオーラ。 それを100%の確率で嗅ぎ分けるのは不可能と思いますが、円山応挙(まるやま・おうきょ)の作品からはとめどなく異彩が溢れていました。
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重要文化財「写生図巻」甲巻(部分)  円山応挙、明和8年~安永元年(1771~72)、株式会社 千總蔵、東京展:後期展示、京都展:後期展示
東京藝術大学大学美術館で開催中の『円山応挙から近代京都画壇へ』に行ってきました。 本展は前期・後期で展示替えがあるのと、京都国立近代美術館への巡回でも展示替えがあるので、何度も楽しめる展覧会です。 展覧会のタイトルにもあるように、メインは円山応挙の襖絵。 余白を大きく残して引き算的に描かれた松をぼんやり見ながら視線を動かすと、突然リアルな孔雀が目に飛び込んできて驚きました。
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重要文化財「松に孔雀図」(全16面のうち4面) 円山応挙、寛政7年(1795)、兵庫・大乗寺蔵、東京展のみ・通期展示
孔雀のポーズはいたって普通なんですけど、細かく細かく描かれているので、周りの余白との対比でよりリアリティが強調されているのだと思います。 羽の毛だけでなく、目の周りの皮膚のシワのような部分まで表現されているんですよ… 知覚の限界まで描くから、実物らしさとして迫ってくるのです。
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重要文化財「松に孔雀図」(全16面のうち4面) 円山応挙、寛政7年(1795)、兵庫・大乗寺蔵、京都展のみ・通期展示
事前知識が無くても、応挙の襖絵の前に立ったら動けなくなってしまうはず。 その実力派絵師は、江戸時代に彗星のごとく京都に現れました。
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重要文化財「写生図巻」甲巻(部分)  円山応挙、明和8年~安永元年(1771~72)、株式会社 千總蔵、東京展:後期展示、京都展:後期展示
250年ほど昔、幅を利かせていたのは狩野派の絵師たち。 その悪く言えば「堅苦しい」作風に対し、突如現れた円山応挙の絵は写生に基づく新しい画風でした。 応挙に続いた絵師たちの系譜は近代まで続き、「円山・四条派」の影響を見て取ることができるのです。 本展は応挙だけでなく、リレーのように続く絵師たちの活躍や画風にも焦点を当てています。
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「狗子図」 円山応挙、安永7年(1778)、敦賀市立博物館蔵、東京展:後期展示、京都展:前期展示
私の大好きな長沢芦雪(ながさわ・ろせつ)や竹内栖鳳(たけうち・せいほう)の可愛い動物の絵も見ることができました。 応挙の犬と芦雪の犬は、よく比較されますよね。 かなり似ている部分があるので直接の影響関係が分かります。 一方で、芦雪の犬の方がちょっと抜けているというか、物心ついていないというか、「ぱぁ〜♡」みたいな効果音が似合うというか…
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「薔薇蝶狗子図」  長沢芦雪、寛政後期頃(1794~99)頃、愛知県美術館蔵(木村定三コレクション)、東京展:前期展示、京都展:後期展示
赤ちゃん言葉で喋り出しそうなほど、芦雪の犬は表情筋が豊かに見えます。 対して竹内栖鳳の犬はガラッと印象が変わりますね。 流れるような線と滲んで混ざる色の面とで、眠たそうな子犬を冷静に描いています。
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「春暖」 竹内栖鳳、昭和5年(1930)、愛知県美術館蔵(木村定三コレクション)、東京展:前期展示、京都展:後期展示
こうして応挙と続く絵師たちの絵を見ていると、応挙の「名作オーラ」はずば抜けているように感じます。 どの絵師も個性があって良いのですが、応挙の絵は臨場感がダントツでした。 それについては、当時の絵師たちも分かっていたのではないか、と今回の展示を見て思いました。 応挙のマネをしても抜ける見込みなど無く、先人に学びつつ独自の道を探ることでしか大成できないと自覚していたのではないでしょうか。
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重要文化財「写生図巻」甲巻(部分)  円山応挙、明和8年~安永元年(1771~72)、株式会社 千總蔵、東京展:後期展示、京都展:後期展示
長沢芦雪は「奇想の系譜」にも位置付けられる絵師ですが、応挙が凄すぎたから生まれた画風なのでは、と直感したんですよね。 そうだとしたら策士だ。 現代のビジネス感覚にも共通するし、円山応挙も長沢芦雪もより好きになりました。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※画像は許可を得て掲載しました。

展覧会基本情報

展覧会名:円山応挙から近代京都画壇へ 場所:東京藝術大学大学美術館 ※京都国立近代美術館に巡回予定 会期:【前期】2019/8/3(土)-9/1(日)、【後期】2019/9/3(火)-9/29(日)※前期後期で大幅に展示替え 休館日:月曜日 ※ただし、月曜日が祝日または振替休日の場合は開館、翌日休館 開館時間:10:00-17:00(入館は閉館の30分前まで) 所要時間:2時間 観覧料:一般は1500円 公式HP:https://okyokindai2019.exhibit.jp

関連情報

公式本は通販でも!遠方に住んでいても手に入るので、通販良いですよね。 応挙寺とまで呼ばれる大乗寺の襖、しっかりした解説つきです。 藝大美術館から近い東京都美術館では、『伊庭靖子展 まなざしのあわい』が開催中です。 同じく上野の東京国立博物館では、三国志展が開催されています。 写真撮影OKでした! 上野から電車ですぐの東京駅にある三菱一号館美術館では、マリアノ・フォルチュニ展が開催中。 ドレスや絵画で満たされた幸せ空間です。 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新の展覧会情報はこちら。 今月の展覧会 今までに行った展覧会一覧 ツイッターでは、ブログに載せていない写真も掲載しています! インスタグラムも。 1人でアート大喜利やってます。 明菜氏のインスタ Instagram 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします! にほんブログ村 美術ブログ いろいろな美術・アートへ
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