アムステルダム市立美術館 主観レビュー(ワリッド・ラード編)。
海外の美術館に行く楽しみは、ざっくり分けて2種類だと思います。 1つは、世界的に有名で美術や世界史の教科書に必ず載っている作品に会いに行くこと。 もう1つは、日本で知られていない作家に出会うこと。 アムステルダム市立美術館では、ニューヨークで活躍するレバノン出身のアーティスト、ワリッド・ラードさん(Walid Raad)の個展を開催していました。 展覧会タイトルは『LET’S BE HONEST, THE WEATHER HELPED』です。 カタカナで検索しても少しはヒットしますが、ほぼ日本語での情報は無く日本では知られていない作家。 2012年のドクメンタに出展していたようで、レポート記事がヒットします。 レバノン出身ということで、中東をめぐる問題が主なテーマ。 かと思えば、美術館建設の背後に動く政治やオイルマネーをダイナミックに描き出す作品もありました。 2017年にオープンしたルーブル・アブダビ美術館をテーマにした作品がこちら。 解説の英文を日本語で要約すると、 「2017年のオープニングに伴い、パリのルーブル美術館から9つのイスラムに関する展示品がアブダビへ送られた。しかし、アブダビに到着するとそれらは別の顔になり、影を失った」 なんですけど、これは何の例えなのだろうか…? フェイクの影を隣に足したら、現実の影が前方に現れた…と締めくくられています。 ラードさんの作品では本物の影を展示しているよ、とのこと。 ヨーロッパで「これがイスラムの文化財だ!」と言われているものが本場へ帰った途端、霞んで見えた…ということでしょうか。 そういえば「文化財返還問題」というのがあって、随分昔にヨーロッパ諸国が中東やアフリカから勝手に持って帰ってきたものがあるじゃないですか。 例えば、エジプトは大英博物館にロゼッタ・ストーンの返還を求めてますよね。(中東ではない例ですが) オイルマネーでアラブ諸国も力を持ってきていますし、美術を牽引してきた欧米が媚を売らなければならなくなるかもしれません。 それはそれで構いませんけど、金・権力とリンクせざるを得ない美術の性を思うと切なさもありますね。 ビジュアル的にとても面白いのがこちら! サッチャーやゴルバチョフなどの顔が花になっています。 植物図鑑のようなまとめ方。 私の読解が間違っていなければ、レバノン内戦に関わった人たち、という切り口でお花にしているのだそう。 やや雑な感じでコラージュされてるところが批判的で良いな、と思います。 茎と首のつなぎ目など、切り貼りした感が妙に好き。 私が中東の歴史や現在に疎いため、意味が分からないところもあったのは確かです。 でも、サッチャーやゴルバチョフの顔が花になっている作品などはすごく分かりやすく、中東への関心を掻き立てられます。 展示をきっかけに興味を持ったり勉強したりできるので、それがアートの1つの強みではないかと思いました。 Share!▶︎Tweet美術館基本情報
館名:アムステルダム市立美術館(Stedelijk Museum Amsterdam) 行き方:2、5、12番トラムでVan Baerlestr下車 所要時間:3時間 観覧料:€15 公式HP:https://www.stedelijk.nl ※ワリッド・ラード個展は2019年5月18日〜10月13日まで関連情報
アムステルダム市立美術館は、近現代アートのコレクションも凄かった! 今回のオランダ・ベルギーで行きたいところリスト。 前回はシンガポールへアート旅に行きました。 読者登録していただくと、LINEに「アートの定理」の更新情報が届きます! 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新の展覧会情報はこちら。 今月の展覧会 今までに行った展覧会一覧 ツイッターでは、ブログに載せていない写真も掲載しています! 明菜(アートの定理)をフォローする インスタグラムも。 1人でアート大喜利やってます。 明菜氏のインスタ 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします!
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