ベルギー王立美術館 主観レビュー(世紀末美術館 編)。

ベルギー王立美術館は3つに分かれており、古典、世紀末、マグリットとそれぞれの館があります。 体感では、世紀末美術館は展示作品数が一番多いと思いました!
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フェルナン・クノップフ《愛撫》(1896年)
ベルギーで絶対に見たいクノップフ《愛撫》もここにあります。 世紀末美術館はクノップフ祭りで、クノップフ作品がとてもたくさんありました。
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フェルナン・クノップフ《シューマンを聴きながら》(1883年)
《愛撫》も好きなんですけど、《シューマンを聴きながら》に惚れました。 泣いているような女性に目が行く作品ですが、タイトルを見た上でもう一度絵画を見てみると…
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フェルナン・クノップフ《シューマンを聴きながら》(部分)(1883年)
画面の左上に、ピアノと弾いている人が見切れているのが分かります。 この人が奏でる演奏に女性の心が震えている様子が伝わってきて、私も泣きそうになりました。
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フェルナン・クノップフ《シューマンを聴きながら》(部分)(1883年)
シューマンのピアノ曲はクララと結婚する前に多く作られており、彼女への情熱を表現した曲も多いです。 どんなピアノ曲がクノップフの絵の中で演奏されているのか、想像するだけでも楽しい。 (私はシューマン作曲、リスト編曲の『献呈』が好きなんですけれども)
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ジェームズ・アンソール《The Lamp-Lighter》(1880年)
ただ、クノップフと同時期に活躍していたベルギーの画家アンソールは、本作を酷評したのだとか… アンソールが描いた作品と似ていたので、「マネすんな!」って感じだったようです。 そんなアンソールの作品はこんな感じ。 仮面モチーフが代表的です。
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ジェームズ・アンソール《The Strange Masks》(1892年)
なんとなくアンハッピーで不思議な絵なんですよね。 アンソールの絵はまじまじと見たことが無く、名前だけ知ってる画家だったので、世紀末美術館で見られて大収穫でした。 静物画ですらアンハッピーな感じしません?
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ジェームズ・アンソール《Chinoiseries with Fans》(1880年)
アンソールは、ユーロが導入される前に使われていた100ベルギー・フラン紙幣の肖像に採用されていた人です。 日本のお札で言うと福澤諭吉ポジションね。 アドルフ・モッサの作品も多かったです。 この人もアンハッピーな絵を描くんですよ…。 フランス人の画家ですが、ブリュッセルにもたくさんありました。
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ギュスターヴ=アドルフ・モッサ《The Dead Women》(1908年)
モッサは日本の怖い絵展で、彼の描く女性の顔が「ベッキーに似ている!」と話題になった画家です。 今回はベッキーっぽい作品は無かったけど、怖さは健在。
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ギュスターヴ=アドルフ・モッサ《Eva Pandora》(1907年)
モッサが描くのはホラー的な怖さだけでなく、性倒錯に対する不気味さや、ある意味の不愉快さもあると思うんですよね。 超常現象より身近なサイコパスの方が怖いのと同じような…。
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ギュスターヴ=アドルフ・モッサ《Circe》(1904年)
と、ここまで怖めの絵しか紹介していないんですけど、「世紀末美術館」ということで古典に含まれないものすべてが展示されていました。 ハッピーな印象派もここにあります。
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アルフォンス・ミュシャ《The Nature》(1899-1990年)
アール・ヌーヴォーを代表するミュシャの作品もあります。 エミール・ガレのガラス作品もありましたし。
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エミール・ガレ《The Sea Horse》(1901年)
しかし19世紀末以降って本当に色んな方向性の作品がある。 写実主義や印象主義によって絵画で表現できること・して良いことの幅が一気に広がったんだってよく分かりました。 この作品は19世紀末に描かれたものですが、今私が取り上げたら「児童ポルノだ!」って炎上しません?
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レオン・フレデリック《The Stream》(1890-1899年)
ベルギーの話ではないですが、過去に描かれた作品が現代の考え方に照らして不適切と糾弾される、なんて事件も起こっています。 (バルテュスやチャック・クロースとか) さらに今、日本では表現の不自由展をめぐってさまざまな議論が起こっています。
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レオン・フレデリック《The Stream》(部分)(1890-1899年)
現代の「表現の自由」についても一考の価値はありますが、長い時間をかけて表現の幅が広がってきたことにも尊厳を持ちたいな、と思いました。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加

美術館基本情報

館名:ベルギー王立美術館『世紀末美術館』(Musée fin-de-siécle Museum) 行き方:ブリュッセル中央駅から徒歩10分くらい 所要時間:2時間 観覧料:€10(古典美術館と共通)または€15(古典美術館、マグリット美術館と共通) 公式HP:https://www.fine-arts-museum.be

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