『カミーユ・アンロ|蛇を踏む』主観レビュー。

『蛇を踏む』という衝撃のタイトルを冠した、カミーユ・アンロさんの個展に行ってきました!
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カミーユ・アンロ《青い狐》展示風景
アンロさんはパリ出身のアーティストで、文学、科学、宗教などを深く深く調査して作品を制作しています。 いけばなの展示では、それぞれの作品に書物のタイトルが呼応していて驚きました!
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カミーユ・アンロ《革命家でありながら、花を愛することは可能か》より『源氏物語』
源氏物語です。 古今東西の文学・記録などから、インスピレーションを膨らませて「いけばな」にしているのですね。 使われている花材にも注目してください。 花言葉や植物の性質が文学作品に呼応しているので、読み解くのが本当に面白い。 『源氏物語』の花材の花言葉は、アジアンタムが「無垢」、胡蝶蘭が「清純」、ヤシは「栄光」です。 (クリナカンタスナタスは分からない)
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カミーユ・アンロ《革命家でありながら、花を愛することは可能か》展示風景
私は物書きなのに他人の文章を読むのが壊滅的に苦手なので、あまり知っている作品が無く… 気になった作品はメモし、後で読むことにしました。 文学だけでなく、エジプトの『死者の書』もあるので、アンロさんの興味の幅広さにも驚きます。 どんな本好きでも、『死者の書』まで精通している人は少ない…よね?
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カミーユ・アンロ《革命家でありながら、花を愛することは可能か》展示風景
既存の芸術をリソースとしたいけばな作品は他にもありますが、書物をテーマにするのは面白いです。 書物には色や形が無いので、無から有を生んでいるとも解釈できます。
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カミーユ・アンロ《革命家でありながら、花を愛することは可能か》より『蛇を踏む』
展覧会のタイトルである『蛇を踏む』は、川上弘美さんの著書からです。 さっそく電子書籍で購入して読みました。 こちらの作品の考察は、ART HOURSの連載で書きますね。
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カミーユ・アンロ《革命家でありながら、花を愛することは可能か》展示風景
『蛇を踏む』は主人公のヒワ子ちゃんが蛇を踏んだことで奇妙な現実が浮き彫りになっていく物語なんですけど、アンロさんの個展でも、訪れた人は『蛇を踏みそう』になります。 《青い狐》のインスタレーションで蛇のおもちゃが不規則に動くので、いつのまにか足元にいるんですよ。
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カミーユ・アンロ《青い狐》展示風景
《青い狐》はアフリカ・ドゴン族の創世神話に関する研究書『青い狐 ドゴンの宇宙哲学』を基に、ドイツの哲学者ライプニッツの原理を重ね、世界の秩序と多義性を分析したインスタレーション、なのだそうです。 ドゴン族もライプニッツの原理も分からない私はお手上げだったけど、宇宙から見た地球のように真っ青な空間はなかなか楽しかった。
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カミーユ・アンロ《青い狐》展示風景
あと、写真を撮り忘れてしまったのですが、映像作品の《偉大なる披露》も必見です。 スミソニアン博物館で特別研究員として行ったアーカイヴの調査に基づく作品で、各地の神話や宗教がないまぜになったような創世をパフォーマンスアーティストが語ります。 同時に、リズミカルにデスクトップのウィンドウが開いては、神話や科学を思わせるイメージを映します。 情報が溢れる現代と静かなスミソニアン博物館を対比しているよう。
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展示風景
ドローイング作品は、人間の心理を率直に描いたようで意外な感じがしました。 いけばなや《青い狐》、《偉大なる披露》は文学や科学への考察によって理性的に組み立てられていますが、ドローイングは直感的な気がします。
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展示風景
凡庸な人間が、自分の服を選ぶように表情を選んでいて、でも自分の胴体と服は繋がっているからどれも1人に紐付く感情で…
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カミーユ・アンロ《青い狐》展示風景
文学、哲学、人類学、宗教などさまざまな知をテーマに制作するカミーユ・アンロさん。 背景を含めてすべてを理解するのは、私には無理でしたけど、好奇心を掻き立てられる展覧会でした。 世の中には知らないことがたくさんあって、ワクワクしますね。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:カミーユ・アンロ|蛇を踏む 場所:東京オペラシティ アートギャラリー(新宿) 会期:2019年10月16日(水)-12月15日(日) 休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日) 開館時間:11:00-19:00 (金・土は11:00-20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで) 所要時間:1時間 観覧料:一般は1200円 公式HP:https://www.operacity.jp/ag/exh226/

関連情報

アンロさんの作品に引用された『蛇を踏む』は芥川賞を受賞しています。 不思議な物語で、鑑賞の前後に読むのをおすすめします。 上野では注目のゴッホ展が始まりました! 六本木のバスキア展も話題! 個人的に、ラウル・デュフィ展が最高だった…。 読者登録していただくと、LINEに「アートの定理」の更新情報が届きます! 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新の展覧会情報はこちら。 今月の展覧会 今までに行った展覧会一覧 ツイッターでは、ブログに載せていない写真も掲載しています! インスタグラムも。 1人でアート大喜利やってます。 明菜氏のインスタ Instagram 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします! にほんブログ村 美術ブログ いろいろな美術・アートへ
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