美術の広がりが私には見えている話。

アートの定理をいつも読んでくださる方は、美術館が大好きな方がほとんどだと思います。 月に4〜5回行くくらい、普通な人も多いでしょう。 残念ながら、あなたは結構な変わり者… ですが、少しずつ美術を好きなファン層が広がっていると感じています。 一方で、美術業界の内側の人や美術ファンから、なぜか広がりに対しての批判も見受けられます。 せっかく美術ファンを増やすチャンスなのに、なぜ批判が生まれるのか、私にはさっぱり分かりません。 この記事では、この辺のモヤモヤについて私が思うところを書いていきます。

アートの受け手の広がりが見えてきた。

ニッチ極まりない美術業界ですが、広がりが見えてきていると思うんです! 例えば、森美術館のお客さんは10代や20代の若い層が多く、年齢別の来館者の割合は一般的な傾向の真逆です。 森美術館は写真撮影に寛容で、しかも映える写真も撮れるので、若い人が多くなっていると思われます。 なお、森美はインスタ映えを狙っているわけではないと主張しており、私もそう信じているので、断っておきますね。 本については別記事で書きました。 また、先日はイギリスの大学から美術館に行く人は長生きできるとの情報が出てきて、話題になりました。 因果関係はまだ立証されていないので、何とも言えないですが。 さらに、最近はアート思考をビジネスに取り入れる話もあります。 山口周さんの本が火付け役で、援護射撃する本や講演も増えています。 インスタも健康もビジネスも、共通点は美術業界の外に「明確に」アプローチしていることです。 美術館を訪れるきっかけや、美術メディアを読んでみるきっかけになる「入口」を、業界の外に作っていることなんです。 これって、美術業界の内側にいる人にはできないんですよね。 山口さんがビジネス×アートのドアを作れたのは、彼が美術ではなくビジネスパーソン側にいたからだと考えています。 こうして、美術の外側の人たちが勝手に「入口」を築いている様子が私には見えます。 出口ではなく入口なので、どんどんお客さんが入ってきます。 この景色を、「美術が広がっている」と表現しました。

広げてどうすんねん、って批判あるじゃん。

え、広がった方が良くない? 「今以上のお客さんはいりません」って美術館やギャラリー、いらっしゃるのかしら。 今まで取材した美術館やギャラリーでは、そんな様子は見られませんでした。 今以上のお客さんが要らない所があるなら、それは結構ですけど、現状維持は簡単ではありません。 日本は人口が減っているので、「何もしない=先細り」が確定しているのです。 現状維持すら努力が必要です。 だから、ファン層は広がった方が良いと思う。 なお、ときどき「ビジネス書が売れるだけで、私たちには何の利益もない!消費された!」との美術関係者の意見を見ますが、チャンスを不意にしただけですよね… 被害妄想だと思います…

なぜ美術館に行く目的で批判されなきゃいけないの?

確かに、健康に良いとか、ビジネスに役立つとか、字面だけ見たら胡散臭いです。 ツボ売る商売と同じ売り文句なんですよね。 眉唾感すごいの。 それは私も分かります。 でも「○○に効くと話題になっていたから来てみた」って人がいても良い、というか、いればいるほど良くないですか。 その後、美術自体が好きになっていくことを期待し、見守るのではダメですか。 新しく美術を好きになった人に対して、「どうせ○○目的だから、展示なんか見てないさ」と言う人を目にするのですが、どうして他人の頭の中が分かるのでしょうか。 単なる決めつけです。 仮にその予想が正しかったとして、すなわち「来るべからず」とはなりませんよね。

美術鑑賞の目的とは。

一生懸命に展示を企画する中の人など美術関係者の気持ちを思えば、批判が出るのも分かるんです。 「ビジネスやらインスタやらに頼らず、美術品と向き合ってもらいたい!」 その思いが、批判につながっているのではないでしょうか。 それは凄く分かる。 美術を信じる思い、一部の人はちゃんと理解してます。 大丈夫です、本当に大丈夫だから、お客さんを信用してください。 ただ、今まで美術に関心が無かった人が、いきなり関心を持つことは皆無に等しいです。 「○○に役立つ」「インスタ映えする」とワンクッション置くことで、美術に関心を持ってもらえるのなら、お得だと思いませんか? 美術を信じるなら、一見さんを常連さんに変えるくらいのこと、できると思いませんか。 ただのワンクッションなのだから、温かい目で美術が広がっていくのを眺めてはいけませんか。

まとめ

私の目には、大勢に広がる美術と批判の両方が見えているので、景色を文章化してみました。 美術業界でも新規vs古参の構図が成立するんですね、びっくり。 日本の経済なんてオワコンなので、間口が広がるのは生存戦略として正しいのではないかと思います。 (もっと確実なのは、石油王のパトロンを見つけるなど、外国資本を持ってくることなんだけど、それは別の話) 私だって、美術ライターとして食べていけるのは、美術メディアを読むお客さんがいるから。 「私の話じゃないから、美術館の集客なんかどうでも良いも〜ん」とはなりません。 ファンが増えるのは良いことだと思います。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加

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