『すべての、女性は、誰もが、みな、疲れている、そう、思う。 all the women. in me. are 』主観レビュー。

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Natalie Frank《Story of O VIII》2018、《Story of O III》2017-2019
「すべての、女性は、誰もが、みな、疲れている、そう、思う。」 すべての女性に(もしかしたら男性も)心当たりがある7つの単語の展覧会が始まりました。 会場はGINZA SIXにあるギャラリー、THE CLUBです。
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展示風景
本展をキュレーションしたジャスミン・ワヒさんは、ニューヨークに拠点を持つインディペンダントキュレーターです。 インド系のルーツを持つジャスミンさんも、出自が西洋でないことによる不利や、アート業界における女性の生きづらさを自覚しており、本展のコンセプトにもつながっています。 海外でも、美術館館長など組織や、時に業界をも動かす職業は男性が多いのだそう。 アート業界は女性も多いのですが、「誰かのために働く職」にとどまってしまう傾向があるようです。
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Marilyn Minter《Thigh Gap》2016
マリリン・ミンターさんは、映画「アートのお値段」にも出演されているので、知っている人も多いかも。 本展では写真作品2つと、写真を元に描かれたスーパーリアリズムの大きな作品1つを見ることができます。
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Marilyn Minter《Plush #7》2014、《Plush #2》2014
いずれも女性の際どいパーツを写していますが、そうと断定できないくらいオブラートに包まれています。 液体の滴りによって、エロティックさが強調されるとともに、見る人によって何を重ねるのかが異なるのでは。
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Laurie Simmons《Blue Hair/Red Belt/Blue Dress/Orange Room》2014
ローリー・シモンズさんの作品は、某アニメのプリンセスのような顔の着ぐるみを着用した写真でした。 一度見たら忘れられないインパクトで、現実の女性と創作のヒロイン像とのギャップを不気味に描き出しています。
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Laurie Simmons《Blonde/Aqua Sweater/Dog》2014
顔が不気味すぎることが、メッセージとして成立している作品です。 フィクションで描かれる女性たちは、顔や体形など外見だけでなく、中身も現実離れしていることが多くないですか?
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Andrea Chung《Sisters of Two Waters XII》2019、《Sisters of Two Waters X》2019、《Sisters of Two Waters XI》
ジェンダーギャップを始め、属性による有利・不利を解消するためには、相互理解が必要です。 しかし、ギャップを解消したいと思っているのは不利な人だけなんですよね。 有利側にいる人は現状維持で良いので、不利側の働きかけは届きにくいです。 さらに、有利側の人々は自分たちの優位性に無自覚なことも多く、本当に届かないです。
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Hiba Schahbaz《Rose Garden》2019、《Self Reflection》2019
そうして届けるべき有利側に思いが届かない状態が続くと、結束するべき不利側の人々が傷つけ合う事態も起こります。 私が経験したコミュニケーションでの嫌な思いは、男性より女性から受けた方が多いかも… ヨーロッパにいたときは、アジア人差別を食らったことがあるのですが、ブラックの方からでした。
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Mequitta Ahuja《Journeyman II》2015
不利側の人々が傷つけ合うことなんて、有利側にとっては益々どうでも良いでしょうね。 内輪で争っても何も解決しません。 とても残念なのですが、有利側の基準で作られた社会で不利側が伸び伸びと生きるには、繰り返される差別にいちいち立ち向かうしかないのだと思います。
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Zoë Buckman《Londesborough》2019、《the milk has been drank it's done it's over it's gone》2019
本展は、まさに「有利側が作った制度の上で正攻法で戦っている」ように見えました。 上述したように、アート業界の要職は男性が多いのです。 男性的価値観が優位な枠組みの中で、女性作家が世の中に疑問を発表しているのが、本展「すべての、女性は、誰もが、みな、疲れている、そう、思う。」なのです。
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Chitra Ganesh《Melancholia: Red death》2011
「all the women. in me. are tired.」 展覧会のタイトルであるこの7単語は、Nayirrah Waheed(ネイイラ・ワヒード)さんの詩から取られました。 キュレーターのジャスミンさんは、1月24日に開催されたトークイベントでも、TEDxのプレゼンテーションでも、この詩には続きがあると言っています。
彼女が考える続きとは、「but carry on.」 展覧会タイトルに似せて訳すなら、「でも、進む、前に。」といったところでしょうか。 私たちの人生は、独力ではどうしようもない不条理に晒されながら、それでも自由の獲得に向かって続いていくのです。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:すべての、女性は、誰もが、みな、疲れている、そう、思う。 all the women. in me. are tired. 会場:THE CLUB(GINZA SIX 6F 銀座 蔦屋書店内) 会期:2020年1月25日(土)-3月5日(木)(休廊日 2月25日(火)、26日(水)) 開廊時間:11:00 - 19:00 所要時間:30分 観覧料:無料 公式HP:http://theclub.tokyo お問い合わせ:03-3575-5605, info@theclub.tokyo 公式インスタグラム:https://www.instagram.com/theclub.tokyo/

関連情報

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