『ドローイングの可能性』主観レビュー。

東京都現代美術館で開催中の『ドローイングの可能性』に行って来ました!
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石川九楊《敗戦古稀 其一》2015 作家蔵
ドローイングとは、普通は「線が中心になって描かれた絵」を指すと思います。 本展では、その核となる要素である「線」を取り出し、展覧会全体で「線による表現の可能性」を追求していました。 線で何を表現するのか、なぜ線を採用して表現しているのかなど、作家によってさまざまなアプローチがあるのです。
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戸谷成雄《露呈する《彫刻》V》1977/1991-2020  作家蔵
例えば戸谷成雄さんの作品は、キャンバスから飛び出した立体的な線に特徴があります。 「ドローイング」というと平面に線を描いたイメージがありますが、三次元でも「線」の方向から見れば「ドローイング」と言えるのかもしれません。
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戸谷成雄《露呈する《彫刻》V》(部分)1977/1991-2020  作家蔵
さらに、四方を囲まれた小部屋のような空間の中には、壁に石のような形のものが無数に散っています。 《視線体 — 散》は鑑賞者が目を動かして点と点を結ぶことで、線のドローイングを生み出す作品です。
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戸谷成雄《視線体 — 散》2019  作家蔵
そこで思ったのですが、星座を作るのと似た行為ではないでしょうか? 大昔、人類が空を見上げて星と星を結んだ行為も、ドローイングだったのかもしれません。
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盛圭太《Bug report》2019 作家蔵
盛圭太さんの作品は、グルーガンで糸を壁に糊付けし、空間に糸を張り巡らせたインスタレーション。 糸で記号が描かれているように見えるものの、途中で切れて不自然なジグザグに切り替わるところがあります。
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盛圭太《Bug report》2019 作家蔵
タイトルの「Bug report」のとおり、バグ、すなわちコンピュータプログラムの不具合を示すようなズレが組み込まれた作品です。 本作は政治や経済のシステマティックさとも重なっているように感じました。
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盛圭太《Bug report》2019 作家蔵
システムに順応した人たちが目の前の課題を解決して社会を進める過程で、さまざまな課題を未来に押し付けている、とも読み取れるのではないでしょうか。 バグの解消のために立ち止まったり前に戻ったりせず、一方向に進んでいく危うさにも触れていると思います。
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盛圭太《Strings》2017
壁の裏側にあるあやとりの映像も、見逃さないでくださいね。 2人の妖艶な手つきによるあやとりは、刻一刻と変化するドローイングでした。
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戸谷成雄《露呈する《彫刻》IV》1976/1991  作家蔵
戸谷さんも盛さんも、空間にドローイングを行う作家とカテゴライズすることはできるかもしれません。 ですが、戸谷さんの線は「視線」、盛さんの線は「あやとりのような関係性」を想起させるもので、似て非なる作品なのです。
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オノ・ヨーコ《On Line》1964(Grapefruit,1971より) 東京都現代美術館 美術図書室
オノ・ヨーコさんによる線の作品も。 一見同じに見える線に対し、「this is a straght line(これは直線)」「this is not so straght(これはあまり真っすぐでない)」などコメントが書かれています。 外見の描写だけでなく、「this line has history(この線には歴史がある)」など、「線」を目の前にあるものとしてだけでなく、時間や感情を持ったものとして意味を広げているように感じました。
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石川九楊 作品展示風景
本展を通じ、鑑賞者は線を見ることに徹底して向き合うことになります。 線をなぞるように見るとき、作家の手の動きを追従する面白さも感じられるのではないでしょうか。
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ほか、マティスや草間彌生さんの作品も必見です! 新型コロナウイルスの影響があり会期が短くなっているのですが、ご都合の合う方はぜひ! Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:ドローイングの可能性 会場:東京都現代美術館 企画展示室 3F(清澄白河) 会期:2020年6月2日(火)~6月21日(日) 休館日:月曜日 開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで) 所要時間:1.5時間 観覧料:一般は1200円 公式HP:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/the-potentiality-of-drawing/

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