『オラファー・エリアソン ときに川は橋となる』主観レビュー。

光や水を扱う現代アーティスト、オラファー・エリアソンさん。 彼の日本では10年ぶりとなる大規模な個展『オラファー・エリアソン ときに川は橋となる』が開幕しました!
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オラファー・エリアソン《太陽の中心への探査》2017年
自然現象って本当に面白いです。 数学で示される公式どおりの振る舞いをすることがある一方、少しのゆらぎに影響されて全然違う形にもなるから。
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オラファー・エリアソン《人間を超えたレゾネーター》2019年
例えば、鏡に光を反射させたときの角度は、小学生レベルの算数でも計算できるほど単純な法則に従います。 一方、流れる川の真ん中に大きな岩があったとき、流れの速さによって、渦巻いたり渦巻かなかったりします。 どんなパターンが現れるかは、かなり予測しにくいです。
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オラファー・エリアソン《ときに川は橋となる》2020年(部分)
人間は自然について知らないことが多すぎます。 身近な天気予報だって、今でも百発百中ではありませんからね。
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オラファー・エリアソン《おそれてる?》2004年
そんな未知の自然の性質を、私たちの目に見えるように象るのが、オラファー・エリアソンというアーティストなのだと思います。 シンプルな仕掛けで、光や水といった捉えどころの無いものを、アートにしてしまうのです。 《ビューティー》もそんなアートの一つ。 ウォーターミストに虹がかかっている作品です。
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オラファー・エリアソン《ビューティー》1993年
ミストを通って向こう側まで行けるので、作品に近づくほど、虹にも近づくことができます。 しかし、通り抜けた瞬間、虹は消えてしまいます。 掴んだ!と思った矢先に消えるのは、通り抜ければミストが自分の後ろに来るから。 ですが、そんな身も蓋もない理由以上に、虹が消えたことへの寂しさが大きいのです。 光と水に翻弄されてしまいました。
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オラファー・エリアソン《あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること》2020年
《あなたのオレンジ色の残像が現われる》は、ぜひ体感して欲しい作品です。 数秒ことに水色の四角形が投影されたり消えたりを繰り返しています。 水色の四角形を見つめていると、消えた後にオレンジ色の四角形が浮かび上がる、視神経に画像が残る「残像」を利用した作品です。
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オラファー・エリアソン《あなたのオレンジ色の残像が現われる》2000年
さらに、残像を見ている人を見るのも面白いです! オレンジ色の残像が見えている間、壁には何も映っていません。 たまたまそこを通りがかった人からすれば、「あの人、何もない壁を見つめちゃって変だな…」となるわけです。 何かが見えている人・見えていない人の2人が、1つの空間にいるのが面白い。 残像から人間関係まで、1つの作品が教えてくれます。
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オラファー・エリアソン《ときに川は橋となる》2020年(部分)
さて、本展のテーマとなるのは、エリアソンさんの気候変動や再生可能エネルギーへの関心です。 地球温暖化を考えれば、化石燃料を燃やす火力発電や、森林の伐採に課題があることは明白ですよね。 とはいえ、「それなら原始人の生活に戻ろう!」ともなりません。 人類は来た道を前に進むことも、戻ることもできないのです。
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オラファー・エリアソン 《溶ける氷河のシリーズ 1999/2019》2019年(部分)
しかしエリアソンさんのアートは、前でも後ろでもない、横や斜めの道を照らしてくれているように感じました。 それは再生可能エネルギーなどの代替手段だけでなく、人間が自然を守りたいと思う情緒をも示していると思います。
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オラファー・エリアソン《あなたの移ろう氷河の形態学(過去)》2019年、《メタンの問題》2019年、あなたの移ろう氷河の形態学(未来)》2019年
光や水という身近でよく知られた存在も、エリアソンさんの仕掛けを通せば、別の顔を見せてくれました。 見せ方の美意識や表現力も超一流なので、見逃せない展覧会になってます! 週末は入場制限を行う可能性もあるそうなので、平日の来館がおすすめです。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※会場内は一般の方も撮影可能です。

展覧会基本情報

展覧会名:オラファー・エリアソン ときに川は橋となる 会場:東京都現代美術館 企画展示室 地下2F(清澄白河) 会期:2020年6月9日(火)〜9月27日(日) 休館日:月曜日(8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日 開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで) 所要時間:1.5時間 観覧料:一般は1400円 公式HP:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/olafur-eliasson/

関連情報

本展の図録がこちら。 作品写真はもちろん、本人やキュレーターのテキストが充実してます! 海外の現代アーティストの日本語の本ってとても少ないので、貴重な1冊。 同じく東京都現代美術館では、線の可能性を追求した『ドローイングの可能性』展も開催。 YouTubeの動画づくりを頑張ってます!
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