『モネとマティス―もうひとつの楽園』主観レビュー。

ポーラ美術館でモネとマティスに焦点を当てた展覧会『モネとマティス―もうひとつの楽園』が始まりました!
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ⒸKen KATO
モネもマティスも大人気の西洋画家ですが、2人の作風はかなり違うように感じます。 モネは印象派、マティスはフォーヴィスム(野獣派)の画家と分類されるので、別々に紹介されるのが一般的かと思います。
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ⒸKen KATO
しかし、本展では2人の巨匠にある共通点を見出し、彼らの芸術観や生き方を紹介しています。 その共通点とは、「理想の空間を自ら作り上げた」という点です。
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ⒸKen KATO
19世紀から20世紀にかけて、急速な近代化や戦争などを背景に、文学や美術において「ここではないどこか」への憧れが表現されるようになりました。 モネは庭を、マティスは室内を。 自分の理想をふんだんに盛り込んだ楽園を作り上げたのですね。
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ⒸKen KATO
画家として成功したモネは、近代化の波が及んでいないジヴェルニーに邸宅を構えました。 そこで自分好みの花を植え、睡蓮の水辺には日本風の太鼓橋をかけ、理想の庭を作りました。 本展ではモネ自慢の庭を、絵画や写真を通して覗き見ることができます。 たまげるほどの広大さと美意識です…良い意味でのため息が出そう。 一度で良いから訪れてみたい場所だと改めて思いました。
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ⒸKen KATO
睡蓮の連作の展示空間は、オランジュリー美術館の「睡蓮の間」をイメージしたそうです。 曲面の壁に睡蓮の絵がかかった空間に入れば、ジヴェルニーの庭をパノラマで見ているような感覚に浸れます。
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ⒸKen KATO
一方マティスは、テキスタイルや家具を組み合わせて理想の室内を作っていました。 モロッコやアルジェリアなどにも行き、旅先で買ってきたものもアトリエに集めていたそうです。
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ⒸKen KATO
「自分にフィットしたものを選ぶ」という感覚は、現代の私たちの暮らしにおいても重視されることだと思います。 マティスの暮らし方、良いなぁ。 マティスは特にテキスタイルへのこだわりが強かったらしく、北アフリカで作られた「ハイチ」という布や、かつて中央アフリカにあったクバ王国の布なども集めていました。 故郷が織物産業が盛んな町ル・カトー=カンブレジということで、テキスタイルへの目は肥えていたのではないでしょうか。
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ⒸKen KATO
モデルに自分が作った服を着せることもあったそうです。 室内に楽園を作る情熱を汲み取ることができますよね。
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ⒸKen KATO
病気になって絵を描く体力が無くなってから、マティスは切り絵での表現に取り組みました。 大きな切り絵の作品が展示されており、新鮮な切り口や紙の重なりなどもじっくり見ることができます。
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ⒸKen KATO
展覧会の中で頭に焼き付いた、2人の芸術観を表す言葉があったので引用しますね。 モネ「仕事に疲れた神経は、静かな水の広がりにしたがって解き放たれる。この部屋を訪れる人に、花咲く水槽に囲まれて、穏やかに瞑想する安らぎの場を提供できるだろう」 マティス「私が夢みるのは心配や気がかりの種のない、均衡と純粋さと静穏の芸術であり、……つまり、肉体の疲れをいやすよい肘掛け椅子に匹敵する何かであるような芸術である」
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ⒸKen KATO
2人とも安らぎや癒しといった穏やかな理想を求めたことが分かります。 これらの言葉は芸術観と見るだけでなく、暮らしに対する理想でもあるのではないでしょうか。 近代化の大波に民衆が巻き込まれる中、ゆったりとした癒しを追求した姿は、現代人の理想とも重なると思います。 少なくとも私は凄く感化されてしまって、家の断捨離を始めました…
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ⒸKen KATO
理想の空間を作り上げた共通点はもちろんのこと、他にも色んなことを感じられる展覧会ですね。 例えば、主に近代的な新しいものを描いてきたモネが、あるときから自然を中心に描くようになっていく変化も読み取ることができました。 モネとマティスの活動全体に焦点を当てた展示なので、2人の作風の変化とともに思想の変化も感じ取れて面白いです。
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ⒸKen KATO
他にも、モネは繊細な光を求めて北フランスへ、マティスは眩しい光を求めて南フランスへ行ったのも興味深くないですか? 2人の似ているところと違うところがよく表れていると思います。
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展覧会では、新収蔵品のブリジット・ライリー《タブリーズ》を始めとする近現代の絵画も展示されています。 モネやマティスのその先にも考えを巡らせられるでしょう。
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なお、新型コロナウイルスの影響で来日できていない海外所蔵の作品がいくつかあるそうです。 会期最終日は11月3日なので、来日については諦めずに調整されていると伺いました。 とはいえ、6月時点でも約90点が展示されており、見ごたえたっぷりです! (モネの作品34点、マティスの作品34点など)
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ⒸKen KATO
モネとマティスの理想の空間にかける情熱は、人間の生き方の理想にもつながっているように思いました。 豊かな暮らしとは?豊かな生き方とは?といった問いは、モネやマティスなど近代の人々の課題であったとともに、現代を生きる私たちの課題でもあります。 見目麗しい美術を見るとともに、自分の暮らし方を考えるきっかけにもなる展覧会だと思いました。 モネのように広い庭のある家に住み、マティスのようにセンスの良い家具やテキスタイルに囲まれた暮らしがしたいなぁ。(台無しな欲望) Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※許可を得て画像を掲載しました。

展覧会基本情報

展覧会名:モネとマティス―もうひとつの楽園 会場:ポーラ美術館(箱根) 会期:2020年6月1日(月)~11月3日(火・祝) 休館日:会期中無休(展示替えによる臨時休館あり) 開館時間:9:00 ~ 17:00(最終入館は16:30) 所要時間:1.5時間 観覧料:一般は1800円 公式HP:https://www.polamuseum.or.jp/sp/monet_matisse/

関連情報

モネとマティス展の図録は通販でも購入できます。 遠くて箱根まで行けない!という方はぜひチェックしてみてくださいね。 国立西洋美術館では、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展が開催中! 西洋絵画の名品が来日しています。 現代アーティスト、オラファー・エリアソンさんの個展が東京都現代美術館で開催中! トップアーティストの大規模な個展で、評判どおりとても面白かったです。 山種美術館の桜展は、夏ですが会期を変更して開催中です。 YouTubeの動画づくりを頑張ってます!
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