『開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎―』主観レビュー。

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「色のある影」を体験しているところ(このコーナーは撮影可能)
おおー! 3色の影ができてる!面白いですねぇ。 こちらの壁に手をかざすと、色とりどりの影を作れます。 異なる色の光が、さまざまな方向から壁に当たって、壁が虹色になっていますね。
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展示風景
影は光を遮ることによって生まれるものですが、ある光を遮っても、横から他の光が当たれば真っ黒な影にはなりません。 これをさまざまな色の光で行うと、影になるべき部分に色がつくのです。 色と光と影の関係を考察できる、シンプルなのに奥深い実験装置ですよね。
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「色のある影」を体験しているところ(このコーナーは撮影可能)
この不思議な壁は、東京ステーションギャラリーで開催中の『開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎―』の展示の一部です。 色と光と影は「バウハウス」の関心ごとでもあり、本展を訪れた人もその不思議さを体験できるようになっています。
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ヴァルター・グロピウス バウハウス・デッサウ校舎 1925-26年 撮影:柳川智之(2015年)
しかし、そもそも「バウハウス」って何?とはてなが浮かんでいる方も大勢いらっしゃると思います。 バウハウスは1919年にドイツのヴァイマールで開校した造形学校で、今日のアートやデザインにも大きな影響を与えた、歴史的にも重要な教育機関です。
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製図の授業 (ロッテ・ベーゼ) 撮影者不詳、ミサワホーム株式会社
本展は、そんな入学説明会に来たような体験ができる、楽しい展覧会となっていました。 ナチスの弾圧を受けて1933年に閉鎖されたため、今はバウハウスの授業を受けることはできません。 だからこそ、本展で想像を膨らませながら疑似体験できるのは、貴重な機会ではないでしょうか?
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展示風景
バウハウスは講師陣がとても豪華で、カンディンスキーやクレーといった当時の最先端の芸術家も講師を務めていました。 (クレーは仕事をサボって旅に出ていたことも有名ですが) 私がバウハウスを初めて知ったのも、カンディンスキーにハマって調べているときのことでした。
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展示風景
本展では、講師たちがどんな授業を行ったのか、当時の学生のノートや作品を通して読み解いていきます。 講師の作品だけでなく、学生の成果物に注目するところ、とても面白いですよね。
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展示風景
例えば、カンディンスキーの「分析的デッサン」の授業を見ていきましょう。 脚立やテーブル、テーブルクロスなどを配置した対象を観察し、デッサンを行う授業です。
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展示風景
しかし、カンディンスキーが求めたのは写真のような正確さで描くことではなく、物と物の間に働く力のような物理法則を捉えることでした。 物と物が重なったり支え合ったりして、静物が静かに鎮座していることを理解するための授業なのかな、と感じました。 動かない物体はある意味で死んだように見えますが、実際は力の釣り合いによって「安定した静止状態」が保たれているので、無抵抗状態ではないのです。
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展示風景
建築やデザインの領域で直接活かせる知識だとも思いますが、何より驚いたのは、具体から抽象への展開です。 テーブルなどの具体的なものを見て、力の釣り合いのような抽象的な現象を抽出する所に、バウハウスが他の美術学校と一線を画した理由があるのではないでしょうか? 他にも、イッテン、モホイ=ナジ、アルバース、クレー、シュレンマー、シュミットの授業をうかがえる資料が展示されています。 入学前の見学会みたいで楽しいですね。
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1922年のバウハウスの教育カリキュラム図 (「学校便覧」より) 1922年
基礎教育を修了すると、「工房教育」(専門課程)に進むことができます。 バウハウスには次のような工房があったのですが、ユニークではないでしょうか?  ・家具工房  ・金属工房  ・陶器工房  ・織物工房  ・壁画工房  ・彫刻工房  ・印刷・広告工房  ・版画工房  ・舞台工房  ・建築科 家具工房や金属工房はイメージしやすいですが、舞台工房のように何が行われているのか分からないものもありました。 バウハウスは多岐にわたるクリエイターを育成できる学校だったのですね。
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展示風景
舞台工房は、当時の他の美術学校にも例を見ないユニークな工房だったそうです。 オスカー・シュレンマーの代表作となる「三つ組のバレエ」は、本展でも映像を鑑賞することができました。
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オスカー・シュレンマー《三つ組のバレエ》展示風景
おもちゃのような衣装を身にまとった演者が不思議な舞台の上で踊るバレエで、中毒性が高い映像でした。 3部構成で3人のパフォーマーが登場し、18種類のコスチュームに全12場で構成されており、タイトルのとおり「3」が基調の作品です。 さらに、バウハウスに日本からの留学生がいたことも驚きです。 留学した水谷武彦、山脇巌、山脇道子、大野玉枝による作品や資料が一堂に集まって展示される、初めての機会となったそうです。
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展示風景
バウハウスについて日本語で書かれた資料を見ると、なんだかテンションが上がってしまいました。 日本のアートやデザインとバウハウスの接点を感じられたように思います。
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展示風景
開校した1919年から100年を迎えたバウハウス。 ナチスによる閉鎖のように表現への弾圧を無視してバウハウスを語ることはできませんが、今でも名声が高いのは優れた教育のためだろうと感じます。 冒頭で紹介した色のある影の実験を始め、バウハウスの造形教育を想像できる展覧会でした。 いかにユニークで進んだ教育機関だったのかが分かりますし、展示されている作品をよしよしと愛でたくなってしまいました。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎― 会場:東京ステーションギャラリー 会期:2020年7月17日(金)~9月6日(日) 休館日:月曜日[8月10日、8月31日は開館] 開館時間:10:00 - 18:00 ※金曜日は20:00まで開館 ※入館は閉館の30分前まで 所要時間:2時間 観覧料:一般は1200円 ※入館券はローソンチケットで販売 公式HP:http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202006_bauhaus.html

関連情報

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