金沢21世紀美術館『コレクション展 スケールス』主観レビュー。

金沢21世紀美術館で『コレクション展 スケールス』が開幕しました! 美術館に行く前に、ネットやチラシなどで作品の写真を見て、なんとなく展示を想像する人が多いのではないかと思います。 しかし、写真から想像したのと、実物の印象がずいぶんと違った、なんて経験はありませんか?
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ギジェルモ・クイッカ《ノイフェルト組曲(ギャンブル・テーブルとスロットマシン)》1999 (C) Guillermo Kuitca
本展は、キュレーターの池田あゆみさんがある作品に対して「思っていたより大きいな」と感じた経験がきっかけとなっています。 私も、写真から想像したのと全然違う作品だった!と思ったことは数知れず。 ですが、このギャップが展覧会のテーマになるとは思ったことが無かったので、共感もありつつ大きな驚きがありました。
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宮﨑豊治《眼下の庭》1993 (C) MIYAZAKI Toyoharu
最初の展示室にあるのは、宮﨑豊治《眼下の庭》です。 池田さんが「想像より大きい」と感じたのは宮﨑さんの作品で、本展でもトップバッターの展示となっています。 実は、私は《眼下の庭》に対しては、「写真から想像していたより小さい」と感じました。 樹木のような形と人物らしき部分を、等身大ではないかと想像していたからです。 1つの作品の写真を見ても、ある人は実物より大きく感じるし、ある人は小さく感じる。 それぞれの人間が持つ感覚の違いを考えることも、本展を楽しむ上で大切なポイントになるかもしれませんね。
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アニッシュ・カプーア《L'Origine du monde》2004 (C) Anish KAPOOR
アニッシユ・カプーアの作品も、写真だと大きさが分からない事例の代表格だと思いました。 整った形の図形は、大きいのか小さいのか、あるいはどんな向きなのかも、イメージが追いつきません。 円という抽象的な記号に、「円らしい大きさ」が無く、微小から巨大までさまざまなスケールで存在できるから、サイズをイメージしにくいのではないでしょうか。
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アニッシュ・カプーア《白い闇 IX》2002 (C) Anish KAPOOR
サイズとイメージの関係を改めて考えていくと、写真で作品を見たとき、私たちは自分の経験を投影して「この作品の雰囲気たったら、だいたいこれくらいの大きさだろう」と類推していることが分かります。 その経験がさまざまだから、人によって異なるイメージが湧き、展示室で実物と出会ったとき、人それぞれのリアクションになるのです。 このような考えを広げていくと、ある瞬間のアート鑑賞は1秒前までの人生経験の成果だ、とも言えるのではないでしょうか。 経験を積むことによって想像は高度になりますし、想像をスカッと裏切ってくるアートの面白さも実感できるのだと思いました。
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ギジェルモ・クイッカ《百科全書(パリのヴァル・ド・グラス教会の大理石の床の図面》1999 (C) Guillermo Kuitca
なお、実物を見る前に写真で作品を知ることの是非については、さまざまな意見があると思います。 でも、多くの人は教科書でモナ・リザやゲルニカを初めて見て知るわけです。
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ス・ドホ《階段》2003 (C) Do Ho Suh Courtesy: Do Ho Suh and Lehman Maupin
写真で先に知るのは、現代における作品との普通の出会い方と言えます。 その後、実物の作品と出会ったとき、「思ったより○○だ」とギャップを感じるのは、その人が写真を見た段階でよく想像を働かせている証拠ではないでしょうか?
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手前:田中信行《Inner side – Outer side》2005 (C) TANAKA Nobuyuki、奥:福本潮子《霞の幔幕》2002 (C) FUKUMOTO Shihoko
本当に写真では大きさを伝えづらい作品が多く、読者の方々も迷宮入りしてはいないでしょうか…? 鑑賞者など大きさの基準になるものを、できるだけ外して撮影したので、サイズ感が分からず、理解しきれず宙ぶらりん状態の作品もあると思います。
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イザ・ゲンツケン《ベルリンのための新建築3-8》2001 展示風景
ぜひ金沢21世紀美術館のコレクションと対峙し、ギャップを感じながらアートを見ていただければと思います。 キュレーターの池田さんへのインタビュー内容は、『楽活』に寄稿しました。 池田さんが展覧会を企画するに至ったきっかけなどをうかがったので、併せてご覧いただくと展覧会がより面白くなると思います。 誰もが感じたことがある「思ったのと違う」とのギャップに焦点を当て、鑑賞者の人生経験を問う展覧会だと思いました。 身近な人と一緒に観て、それぞれが感じたギャップを言葉にしてみると、より面白い体験ができそうです。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:コレクション展 スケールス 会場:金沢21世紀美術館 会期:2020年10月17日(土) 〜2021年5月9日(日) 休館日:月曜日(ただし11月23日、1月11日、5月3日は開場)、11月24日(火)、12月29日(火)〜1日(金) 、1月12日(火) 、5月6日(木) 開館時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで / 1月2日、3日は17:00まで) 観覧料:一般は450円 公式HP:https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1784

関連情報

金沢21世紀美術館では、ミヒャエル・ボレマンスとマーク・マンダースによる二人展『ダブル・サイレンス』も開催中です! 東京から金沢に移転してオープンした『国立工芸館』もレポートしました。 YouTubeの動画づくりを頑張ってます!
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