『DOMANI・明日展 2021』主観レビュー。

今年も『DOMANI・明日展 2021』が開幕しました! 文化庁では若手芸術家の海外研修を支援しているのですが、DOMANI・明日展は研修成果を発表する展覧会という位置づけです。
image
袴田京太朗 作品展示風景
趣旨に沿って、今回も若手作家が中心となって展示を行っております。 今回の参加作家は以下の9組です。 ・大田黒衣美 ・利部志穂 ・笹川治子 ・髙木大地 ・新里明士 ・春木麻衣子 ・山本篤 ・竹村京・鬼頭健吾 ・袴田京太朗 同時代のアートは、これからの表現の可能性を感じることができるので好きです。 「試みている」という感じが伝わってくるんですよね。 創意工夫のフレッシュさに刺激を受けられました。 何組か紹介していきますね。
image
大田黒衣美《sun bath》2019
大田黒衣美(おおたぐろ・えみ)さんは、昼寝中の猫の上にガムの切り絵を置くことから始まった作品シリーズ《sun bath》を展示しています。 ガムのキャンバスとなっているモフモフは、猫だったんですね! 「sun bath」とは日光浴のこと。 ふっくらした毛に日が当たって光沢ができています。
image
大田黒衣美 作品展示風景
穏やかな日の様子が伝わる温かい作品でした。 キャンバスとなる猫はいつも違う埃やフケを付けてやってくるそうで、見ようによっては猫が作家を翻弄しているのでは、とも捉えられて面白いです。 個人的には、どうしてガムのレリーフにこだわるのかが気になりました。 他にも切り絵やビーズなど色々考えられるとは思うので、素材が変わっていく展開もあるのかな~と思いました。
image
新里明士《光器》2021
新里明士(にいさと・あきお)さんの器は細かい穴が無数に開いており、光を通してレースのような印象を持つ作品です。 今回は普段の展覧会では見ることができない、意図してヒビを入れた作品が展示されていました。
image
新里明士《光器》2020
普段は小さい傷でも失敗として世に出すことはない新里さんですが、今回は工房にある失敗作を客観的に見つめ、ヒビの入った作品の制作に取り組んだそうです。 「失敗した作品」をただ展示しているのではなく(それも意義ある気はしますが)、作家の美的なセンスが籠ったヒビなのがポイントです。
image
新里明士 作品展示風景
器にピシッと入った裂け目を見ると、なかなか恐ろしいですね…。 亀裂ができるほどのエネルギーが器に蓄えられているように感じます。 今回は意図的なものにせよ、実際の制作過程でヒビが入るのはあり得るでしょうし。
image
新里明士《光器》2020
写真では分かりにくいですが、亀裂が証明で照らされ、展示ケースの下の部分に光の道筋を作っている箇所がありました。 神秘的な一本の道です。
image
髙木大地《Wanderer》2020
髙木大地(たかぎ・だいち)さんは、油絵を展示していました。 私が好きな夜っぽい絵です。
image
髙木大地《Thicket》2019
展覧会に際しての本人のコメントによると、「描くことの本質」にこだわっているように読めました。 作品は、私が見た感じですが、足し算・引き算しながら試行錯誤しているのが伝わってきたんですよね。
image
髙木大地《The moon and a crow》2020
着地点を探っている感じの創意工夫が凝らされ、見ている人の創造性も刺激されるような作品でした。 展覧会全体を通して、ぱっと見は大人しい印象の作品が多かったかな、と思います。 それは全く悪い意味ではないですよ。 時間をかけて向き合うことでエネルギーがじわじわと伝わってきて、目を離せなくなってしまうような作品が多かったのです。
image
竹村京・鬼頭健吾 作品展示風景
現代人の疲労を反映しているようにも感じました。 SNSへの疲れ、コロナへの疲れなど、私たちは何かつけて疲れているようですし。 「流行ってる、インスタ映えする、だから皆さん行きましょう」と煽るお昼の情報番組へのお腹いっぱい感というのかな。 主張や情報が奥に佇むアートが増えているようにも感じました。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加

展覧会基本情報

展覧会名:DOMANI・明日展 2021 文化庁新進芸術家海外研修制度の作家たち 会場:国立新美術館 会期:2021年1月30日(土)~3月7日(日) 休館日:毎週火曜日休館 ※ただし、2月23日(火)は開館、2月24日(水)は休館 開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで 所要時間:1.5時間 観覧料:一般は1000円 公式HP:https://domani-ten.com/

関連情報

DOMANI・明日展2020は特別版で、若手というより重鎮の作品が展示されていました。 山種美術館では、川合玉堂展が開幕しました! 風景画の中に小さな人物や動物を見つける喜びよ。 東京都庭園美術館では、20世紀のポスター展が開催されています。 「Tシャツにしたらカッコいい」と言っていた他のお客さんの声が展示を代表していると思います。 優れたデザインは、「カッコいい」という直感を呼び起こすんですよね。 YouTubeの動画づくりを頑張ってます!
読者登録していただくと、LINEに「アートの定理」の更新情報が届きます! コメント・メッセージはマシュマロで! ⇒マシュマロを投げる ※ネガティブな内容、性的な内容、スパム等はAIにより削除されます。 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新のレビューは「アートの定理 トップページ」からご覧ください。 ツイッターでは、ブログに載せていない写真も掲載しています! 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします! にほんブログ村 美術ブログ いろいろな美術・アートへ
にほんブログ村