『クールベと海 展』主観レビュー。

パナソニック汐留美術館で『クールベと海 展―フランス近代 自然へのまなざし』が開幕しました! 19世紀のフランスで活躍した写実主義の画家、ギュスターヴ・クールベ(1819-1877年)が描いた海の風景画を中心とした展覧会です。 海の話をする前に、写実主義について少し…。
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ギュスターヴ・クールベ《狩の獲物》1856-62年頃 油彩・カンヴァス 個人蔵
「写実主義」とは、ありのままの現実を捉える美術運動のことです。 目の前の風景をそのまま描くことは現代では珍しくないですが、クールベが生きた時代はそうでもありませんでした。 以前の絵画が描いてきたのは神話や宗教といった完全な世界です。 しかし、19世紀頃には考え方が変わってきて、あるがままの自然や社会、現実を捉える画家が現れます。 王道の絵画が理想美を描くものだった一方で、「写実主義」の美術運動が台頭しました。
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展示風景
クールベも写実主義の画家の一人で、自然や現実を冷静に捉えた作品を多く残しています。 私も以前からクールベの絵が好きだったので、本展をとても楽しみにしていました。 特にクールベが描く崖や土が好きなんですよね。 手触りを感じさせる真に迫った表現が魅力だと思います。
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展示風景
そんなクールベさんは、フランスとスイスの境のジュラ山脈のある地方で生まれ育った山育ち。 崖や土の表現が上手いのも納得!と思いましたよね。
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ギュスターヴ・クールベ《フランシュ=コンテの谷、オルナン付近》1865年頃 油彩・カンヴァス 茨城県近代美術館
山育ちのクールベが初めて海を見たのは、22歳のときのこと。 ノルマンディーで初めて海を見て、「私たちはついに海を、地平線のない海を見ました(これは、谷の住人にとって奇妙なものです)」と両親に手紙を出しています。 現代と違い、実際に見る前にテレビなどで映像を見られたわけではないので、海を見たときの興奮は私たちの想像をはるかに超えるんじゃないでしょうか。 手紙では冷静ですが、クールベだって「何だこれはー!!!うおー!!!」と叫んでいたかもしれませんよ。
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展示風景
ちなみに私は海が近い町で育ったので、クールベさんとは真逆。 海は当たり前に近くにあるもので、むしろ山の方が珍しく感じます。 (だからクールベの崖や土に惹かれるのかも)
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ギュスターヴ・クールベ《波》1870年 油彩・カンヴァス オルレアン美術館 © 2020 Musée des Beaux-Arts, Orléans
本展は大人になってから海を見たクールベによる「海の風景画」に焦点を当てており、クールベの複雑な思いが伝わってくるようでした。 きっと、海をすごく気に入ったのだと思います。 でも、すべてを飲み込んでしまいそうな雄大な海に対して、「俺は負けん!」とライバル意識を持って絵に挑んでいたのではないかな、とも感じました。
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展示風景
というのも、クールベは「世界一傲慢な男」を自称するほどの人で、自他共に認める尊大な画家。 ただ、私の中のクールベ像はちょっと違います。 自分を高く評価していただけではないでしょうか。 権力への反抗はありましたが、誰かれ構わず見下すような人ではありません。
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ギュスターヴ・クールベ《エトルタ海岸、夕日》1869年 油彩・カンヴァス 新潟県立近代美術館・万代島美術館
だから、海という大きくて強そうで不思議なものに出会ったとき、「ようやく俺とタイマンを張れる好敵手が現れた!」という気持ちだったのではないか、と思っているんです。 「かかってこい!」って気持ちで海に向かい、キャンバスに向かっていたのではないでしょうか。
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展示風景
クールベは海の色々な表情を描いていますが、本展では山のような形をした波が印象的でした。 波が砕けて白くなっている部分には、崖や土に見られる手触りを感じさせる表現があり、クールベらしさが出ていると思います。 それだけでなく、私が「山のような形の波」を好きなのは、共感できるからでもあります。
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ギュスターヴ・クールベ《波》1869年 油彩・カンヴァス 愛媛県美術館
打ち寄せる波って、毎回高さが違って不思議なんですよね。 もう帰らないといけない時間なのに、「さっき見た波より大きい波を見たら帰る」と自分に言い訳をして、いつまでも家に帰らなかったことがあります。 それは帰らない言い訳なのですけれども。 「あと5分したら起きる」が起きない言い訳で、「あと1回でやめる」がゲームをやめない言い訳であるのと同じです。
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展示風景
クールベも同じようなことを思っていたのではないでしょうか。 もっと高い波を見せてみろ、と挑む気持ちがあったのではないかなあ。
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クロード・モネ《アヴァルの門》1886年 油彩・カンヴァス 島根県立美術館
本展ではクールベだけでなく、同時代のモネやシスレーなどが描いた海や、彼らよりも早く海を描き始めたイギリスのターナーやコンスタブルなどの作品も見ることができます。 他の画家と比較することで、クールベが何を描きたかったのかが分かりやすくなるので、ぜひ会場で自称「世界一傲慢な男」の世界観に触れてみてください。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:クールベと海 展―フランス近代 自然へのまなざし 会場:パナソニック汐留美術館 会期:2021年4月10日(土)~6月13日(日) 休館日:水曜日(※但し5月5日は開館) 開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで) ※5月7日(金)、6月4日(金)は夜間開館 午後8時まで(入館は午後7時30分まで) 観覧料:一般は1000円 公式HP:https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/21/210410/index.html

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