『隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則』主観レビュー。

最近、美術館の展示を見るときに意識していることがあります。 それは、〈喜怒哀楽〉のどれにあたるのか考えることです。 個々の作品や展示全体が〈喜怒哀楽〉のどれにあたるのか、考えながら見ています。
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《V&Aダンディー》2018 模型の展示より
東京国立近代美術館で『隈研吾展 新しい公共性をつくるための🐱の5原則』が開幕しました。 隈研吾さんは《国立競技場》の設計に携わった日本を代表する建築家です。
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《V&Aダンディー》2018 展示風景
本展でも、隈さんの建築は〈喜怒哀楽〉のどれなのかを考えたところ、〈楽〉ではないかと思いました。 人を楽しませる建築、という意味です。 お笑い芸人のように笑いを提供するわけではないですよ。
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展示風景
そもそもこの世界には〈怒〉と〈哀〉が満ちています。 この2つは次々に自然発生してしまうので厄介です。 公共の空間とは、大勢の見知らぬ人々が行き交う場所です。 縮小版の社会なので、公共の空間も〈怒〉と〈哀〉に満ちています。
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《高輪ゲートウェイ駅》2020 模型の展示より
本展では、そんな公共空間に、隈さんがどんな建築をつくってきたのかがわかります。 駅や美術館をはじめ、どの建築にも涼しげな空間がありませんか?
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《高輪ゲートウェイ駅》2020 模型の展示より
光は眩しくない程度に差し、屋根は厳しくない程度に傾斜しています。 内部は狭い感じがまるでなく、建物の中にいても開かれた感じがします。 建築物の形も他に似たようなものがなく、ユニークです。
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《アオーレ長岡》2012 模型の展示より
隈さんの建築は、〈怒〉や〈哀〉に満ちた世界に風を吹かせる〈楽〉ではないでしょうか? だから公共の場に求められるのだと思います。
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《アオーレ長岡》2012 模型の展示より
隈さんは建築を孔・粒子・斜め・やわらかい・時間の5原則で分類し、展覧会で解説しています。 私の言葉で言い換えると意味が変わってしまうので、詳しくは会場でお読みいただきたいのですが、どの原則も〈楽〉につながっているように感じました。
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《国立競技場》2019 模型の展示より
特に「やわらかい」は〈楽〉と似ていないでしょうか。 一般的には、建築は固くて頑丈な方が良いとされますが、〈怒〉も〈哀〉も一緒に閉じ込められてしまいます。 やわらかい素材を取り入れることで、〈楽〉が生まれるのではないかと考えています。
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《国立競技場》2019 模型の展示より
しかし、隈さんは「コロナ禍は、ハコが人間を少しも幸福にしないということを教えてくれた」とも語っています。 (公共の建築を手がけてきた隈さんのこの発言は、パラドックスをはらむ重要な指摘) そこで、隈さんは🐱(ネコ)の視点に着目しました。 今の時代、都市について提案するなら都市を下から見るべき、との考えに基づいた発想です。
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《東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則》展示風景
本展ではネコの視点から都市を見直すリサーチプロジェクト《東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則》も発表されています。 東京・神楽坂でフィールドワークやGPS測定を行い、半ノラのネコたちの生活をリサーチしました。
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《東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則》展示風景
自分の体よりも広いスペースを求めることなく、ハコのスキマを生き抜く半ノラの生活は、人間にもヒントを与えてくれます。 同時に、社会に満ちた〈怒〉や〈哀〉との付き合い方も変わるのではないかと思います。 先ほどは隈研吾建築を「世界に風を吹かせる〈楽〉の建築」と書きましたが、これからの隈さんの建築は、風ではない別の〈楽〉になるのかもしれません。
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《国立競技場》展示風景
本展は、公共空間の建築はどうあるべきか、これからの都市は建築にどんな役割を求めるのか、展示を通して問いかけているように思います。 社会に〈楽〉を押し付けるのではなく、そっと〈楽〉を差し出す姿勢、とても勉強になりました。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:隈研吾展 新しい公共性をつくるための🐱の5原則 会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー 会期:2021年6月18日(金)~9月26日(日) 休館日:月曜日[ただし7月26日、8月2日、9日、30日、9月20日は開館]、8月10日(火)、9月21日(火) 公式HP:https://kumakengo2020.jp/

関連情報

隈研吾さんの建築を特集した最新の書籍も出ました! 国立競技場、高輪ゲートウェイ駅、角川武蔵野ミュージアムと最新の作品も載ってます。 8月2日までに購入すると特典の対談も読めます〜 国立新美術館では、ファッション イン ジャパン展が開幕しました! 戦後から2020年のファッションを俯瞰すると、流行だけでない大きな流れが見えてきます。 東京都美術館では、イサム・ノグチ展が開幕しました。 石の彫刻の空間には、無宗教ながら神聖さを感じずにはいられませんでした。 YouTubeの動画づくりを頑張ってます!
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