宝石の価値を越える人間。
ルネ・ラリックには、こんなキャッチコピーがぴったりです。

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立像《シュザンヌ》1925年 北澤美術館
東京都庭園美術館で『ルネ・ラリック リミックスー時代のインスピレーションをもとめて』が始まりました。
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香水瓶《カシス》1920年 北澤美術館
ラリック展といえば、同館は2020年2月から4月にかけて『北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美』を開催しました。 1年と少しを経て再びラリックの展覧会なので、これはデジャヴ?と感じる方もいるのでは。 短いスパンでラリック展を開催したのは理由があるはず。 アートの定理では前回展も取材しているので、上記のとおり記事が残っています。 比較すると、ラリックのジュエリー作家の一面にも光を当てたところが新しいです。
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香水瓶《真夜中》ウォルト社 1924年 北澤美術館
ラリックは香水瓶をはじめガラスの作品が有名なので、ガラス工芸家としての仕事はとても重要です。 しかし、本格的にガラスに舵を切る前はジュエリー作家だったので、ジュエリー作家の一面も無視できません。
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ペンダント《冬景色》1898年頃 個人蔵、協力:アルビオン アート・ジュエリー・インスティテュート
当時のジュエリーは、貴重な宝石を使うのが常識。 デザインに価値がなかったとまでは言いませんが、主役は宝石です。 宝石に価値があり、それを身にまとうのがステータスでした。
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ネックレス《葉飾り》(部分)1910年頃 個人蔵、協力:アルビオン アート・ジュエリー・インスティテュート
ところがラリックがジュエリーに用いたのは、ガラスやオパール、七宝、動物の角など。 人工的な素材や希少価値の低い素材など、素材単体の価値でいえば宝石には到底かないません。
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ペンダント《ダンスするニンフたち》1902-1903年頃 個人蔵、協力:アルビオン アート・ジュエリー・インスティテュート
ではラリックが作った作品は価値が低いのか。 そんなことないですよね。 むしろ逆、細部までデザインされて、妥協なく美を追求しています。
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ペンダント《オパールとスイートピーのペンダント》1900年頃 個人蔵、協力:アルビオン アート・ジュエリー・インスティテュート
ラリックは素材の価値よりも作品の造形を重視しました。 言葉にすると簡単そうだけど途轍もない偉業です。 人間によるデザインで宝石の希少価値を越えようとしたんです。
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テーブルウェア《ニッポン》1930年 ギャルリー オルフェ
デザイン重視の傾向はガラス制作に注力するようになっても変わりません。 香水瓶やレリーフも、ラリックが手掛けるものはまるで絵画。 ガラスは絵具よりも格段に扱いにくいので、ラリックのチャレンジ精神もわかるし、同業者は簡単には追いつけなかったでしょうね……。
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平鉢《金魚》1921年 東京都庭園美術館
ラリックの作品を一望すると、本当に一人で生み出したのか疑わしいほどデザインが多様です。 自然、日本美術、古代ギリシャ・ローマの美術、20世紀の新しい女性のイメージなど本当にいろいろ。 多岐にわたるプロダクトを次々に生み出したのは、激しく移り変わる時代の影響もさることながら、デザインをどんどん更新したかったからではないでしょうか。
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平鉢《金魚》(部分)1921年 東京都庭園美術館
ラリックと同じ時代に生きていたら、次はどんなデザインの作品を打ち出してくるのか、楽しみで仕方なかっただろうなあ。 現代からラリックの時代を見ると作品に対してレトロな可愛さを感じますが、同じ時代にタイムスリップした気持ちで見ると凄みがあります。
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展示風景
今回は新館の展示デザインにもこだわりが。 建築家の中山英之さんが手がけ、ガラス作品とそのデザイン画などバックグラウンドを「図鑑」のように体験できる空間も見どころです。
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展示風景
ここは回廊のイメージでしょうか。 私は影が特に気に入りました。 いつも言っているとおり、立体作品は影を含めて四次元の芸術なのですよ。
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展示風景
ちなみに、「ルネ・ラリック リミックス」は「リック」と「ミック」が韻を踏んでいます。 声に出して読みたくなる展覧会タイトルです。 確かに既視感のある作品も多いのですが、私が受け取ったメッセージは今までの展覧会とは異なります。 これが「リミックス」の意味なのかも! Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:ルネ・ラリック リミックスー時代のインスピレーションをもとめて 会場:東京都庭園美術館(本館+新館) 会期:2021年6月26日(土)-9月5日(日) 休館日:毎週月曜日 *ただし7月26日、8月2・9・30日は開館、8月10日(火)休館 開館時間:10:00–18:00 *入館は閉館の30分前まで 公式HP:https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/210626-0905_ReneLaliqueRemix.html

関連情報

本展の図録がこちら。 中山英之さんによる「もうひとつの邸宅」を想起する表紙です。
ルネ・ラリック リミックス 時代のインスピレーションをもとめて
樋田豊次郎 田中雅子 筧菜奈子 ヴェロニク・ブリュム 牟田行秀 池田まゆみ
2021-08-16
SOMPO美術館ではフランス風景画の展覧会が始まりました! 雄弁に物語るコローの絵画は大好きです。 東京国立博物館では、国宝である聖林寺の十一面観音が東京で初めて展示されています。 むっちりした身体の秘密は当時の仏像の作り方にありました。 国立新美術館では、ファッション イン ジャパン展が開催中です。 展示室が広いのが特徴の美術館なのに、狭く感じるほど膨大な衣装が展示されています! YouTubeの動画づくりを頑張ってます!
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