SOMPO美術館で『川瀬巴水 旅と郷愁の風景』が始まりました。
川瀬巴水(かわせ・はすい)は、大正から昭和にかけて「新版画」の分野で活躍した版画家です。

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展示風景
私は版画に疎く、ごめんなさい、新版画も川瀬巴水もピンと来ません。 同じく迷子になっている人もいると思うので、本展と図録を参考に学んだことを中心に紹介していきます。
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展示風景
まず、版画といえば江戸時代に栄えた浮世絵版画を思い出しませんか。 版元のプロデュースのもと、下絵を描く「絵師」、版木に絵を彫る「彫師」、紙に絵を摺る「摺師」が分業して制作した、江戸時代の木版画です。 よく知られた作品には、葛飾北斎の『冨嶽三十六景』や、歌川広重の『東海道五十三次』があります。 しかし明治期になると、海外での人気とは反対に、浮世絵は国内では関心を持たれなくなっていきました。 西洋から流入した「芸術」や「創作」の衝撃に対し、江戸時代からの浮世絵は面白味に欠けたのでしょう。
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展示風景
時代に合った新たな木版画を作ろう。 そう考えたのが、版元の渡邊庄三郎です。 彼が求めたものが、「新版画」でした。 絵師・彫師・摺師それぞれが芸術意識を持ち、伝統の枠組みにとらわれない木版画を目指したのです。 一方の巴水は鏑木清方の門下で美人画を描いていましたが、風景画にも関心を持ち始めていました。 風景画の逸材を探していた庄三郎から、初めて下絵を依頼されたのが、1918年秋のこと。 塩原に取材した「塩原三部作」が好評となって以降、二人は次々に風景画のヒットを生み出しました。
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川瀬巴水《塩原おかね路》1918(大正7)年 秋 木版、紙 渡邊木版美術画舗
巴水が切り取ったのは、日本の原風景。 日が落ちれば辺りは真っ暗で、足元すら見えなくなってしまう、電気も通っていないような場所でした。 近代化する都市の忘れ物を拾って、高度に、便利になっていく社会に届けたのです。
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川瀬巴水《こま形河岸》東京十二題 1919(大正8)年 初夏 木版、紙 渡邊木版美術画舗
巴水の版画からは、彫師や摺師が持つ力量の高さも伝わってきます。 遠目からは青一色に見える湖面が、何色もの色鉛筆で薄く塗ったような線で表現されているなど、「本当に版画ですか?」と言いたくなりました。
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展示風景
ところが、新版画の制作が軌道に乗り、これからというそのとき。 関東大震災により、巴水が大切にしていた写生帖など、あらゆる成果が失われました。 茫然とする巴水。 店の版木や版画をほとんど失った庄三郎。 「やってらんねえ」と諦めても致し方ありません。
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川瀬巴水《芝増上寺》東京二十景 1925(大正14)年 木版、紙 渡邊木版美術画舗
それでも庄三郎は、店の事業再建のために立ち上がりました。 巴水には写生旅行を勧め、これをきっかけに巴水は制作意欲を取り戻し、二人の絆はより強くなります。 震災後は購買層の好みを取り入れ、色数の多い明るい作品が多くなりました。 原色に近い色が多用され、コントラストも強く、現代のイラストに近い色彩感覚だと思います。
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川瀬巴水《池上市之倉(夕陽)》東京二十景 1928(昭和3)年 木版、紙 渡邊木版美術画舗
版画の再興、震災からの復興と、巴水が背負った使命の重さはどれほどのものだったでしょう。 非常事態において、都市から消えゆく日本の原風景を描いて世に送り出してきたところに、巴水の人柄や哲学を感じられると思います。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て会場内を撮影しました。 ※画像も許可を得て掲載しており、無断転載を禁じます。

展覧会基本情報

展覧会名:川瀬巴水 旅と郷愁の風景 会場:SOMPO美術館 会期:2021年10月2日(土)~12月26日(日) ※会期中に一部展示替えあり 【前期】10月2日(土)~11月14日(日) 【後期】11月17日(水)~12月26日(日) 休館日:月曜日/11月16日(火) 開館時間:10:00 - 18:00(入館は閉館30分前まで) 公式HP:https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2020/kawasehasui/

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