パナソニック汐留美術館で『ブダペスト国立工芸美術館名品展 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ』が始まりました。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、西洋がどのように日本から影響を受け、その美術を解釈してきたのか、西洋の工芸品を通して探る展覧会です。

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展示風景
日本の美術品や工芸品が、西洋に本格的に伝わったのは、19世紀後半のこと。 それまでの鎖国政策が解かれ、1867年のパリ万博などで日本美術が紹介されると、西洋では日本趣味が大流行しました。
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展示風景
螺鈿や蒔絵など高い技術で装飾された、もはや芸術作品と呼んでも良い日用品。 どんな用途で使うのかもよくわからないし、ミステリアスなところも魅力。 日本の工芸品は、西洋の人々に大きな衝撃を与えました。 西洋では、日本の美術品や工芸品を輸入するだけでなく、自分たちでも日本風の作品を作ろう、という動きが高まりました。 これをジャポニスムと言います。
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《蜻蛉文花器》エミール・ガレ 1890年頃 ブダペスト国立工芸美術館蔵
ジャポニスムの工芸品としてよく紹介される作例といえば、エミール・ガレのガラスの作品ですね。 植物や昆虫、魚など、自然に着想を得てモチーフにする、日本美術の影響が見られます。 どこか西洋趣味なところもあり、楽園を形にしたような美しさがあります。
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《孔雀文花器》ルイス・カンフォート・ティファニー 1898年以前 ブダペスト国立工芸美術館蔵
ドーム兄弟、ルイス・カンフォート・ティファニー、ロイヤル・コペンハーゲンなど、見どころは多々ありますが、特に注目したいのが、ハンガリーの名窯「ジョルナイ陶磁器製造所」です。 ここまで真っ向からジャポニスムに取り組んでいる西洋の工芸品は初めて見ました。
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《結晶釉花器》ジョルナイ陶磁器製造所 1902年 ブダペスト国立工芸美術館蔵
《結晶釉花器》には、青い花がたくさん描かれていますが、ところどころに絵具が飛び散ったような斑点模様があります。 偶然に生まれた模様が良い味になり、作品に深みをもたらしているのではないでしょうか。 自然の力と人間の美意識がひとつになり、小宇宙を作りだしているような感覚があります。
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展示風景
まったく同じものを作るのは無理でしょうし、この世にひとつしか存在しないんですよね。 人間の創作に対して、ときどき、気まぐれに力を貸してくれる自然。 その偶然性、愛おしすぎます。
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展示風景
職人が頑張るのはもちろんだけれど、予期せぬ事態を歓迎し、偶然が生む創作の余地を残すのは、東洋らしい美意識なのだそうです。 西洋の文化では、人間が思い描いたとおりの完璧な仕上がりになることが高く評価されていた、とのこと。
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手前:《天空風景文花器》ジョルナイ陶磁器製造所 1898年 ブダペスト国立工芸美術館蔵
真逆の価値観に触れ、自前で作れるようになるまで、西洋の職人たちにはどれほどの困難があったんだろう。 ジョルナイ陶磁器製造所の作品は、日本の美意識にかなり近いので、「ほぼ日本の作品だ!」と驚きながら鑑賞しました。
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展示風景
蒔絵に影響を受けたラスター彩や、象嵌を思わせる装飾もあり、ジョルナイ陶磁器製造所は特に日本の影響が強いと感じました。 ちなみに私は、ハンガリーに勝手に親愛の情を持っており、ぜひ訪れてみたい国でもあります。 『リザとキツネと恋する死者たち』というハンガリーのコメディ映画が大好きでしてね。 監督の日本愛(と、ちょっと間違った日本イメージ)がたまらなく愛おしいんです。
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展示風景
そんなわけで、勝手に片思いしているハンガリーの、質の高い工芸品を見ることができ、とても幸せな展覧会でした。 作品に日本らしさを見出せたことも、片思いの人が自分と同じ趣味を持っていたときにように、嬉しく思っています。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。 ※画像も許可を得て掲載しており、無断転載を禁じます。

展覧会基本情報

展覧会名:ブダペスト国立工芸美術館名品展 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ 会場:パナソニック汐留美術館 会期:2021年10月9日(土)~12月19日(日) 休館日:水曜日 ただし11月3日は開館 開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで) ※11月5日(金)、12月3日(金)は夜間開館で20:00まで(入館は19:00まで) 公式HP:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/21/211009/

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