才能って何だと思いますか?

才能をどう定義するかは難しいですが、生まれつきの優れた能力を指すことが多いと思います。
優れた絵画や彫刻、漫画、アニメ、映画に触れて、作り手の努力以上の何かに理由を求めたくなったとき、「才能」という言葉が使われます。

あらためて、才能ってなんだろう?

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展示風景
そんな疑問にひとつの解を示してくれるのが、『庵野秀明展』です。 本展は国立新美術館、大分県立美術館で開催され、ただいま大阪・あべのハルカス美術館で6月19日まで開催中です。 大阪展の終了後は、山口県立美術館、新潟県立万代島美術館に巡回予定です(以降も追加巡回を調整中とのこと)。 説明不要だと思いますが、庵野秀明(あんの・ひであき)さんは、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の監督で知られる監督・プロデューサーです。
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展示風景
1960年に山口県に生まれ、高校、大学での自主映画制作を経て、アニメーターとして活動を開始。 『風の谷のナウシカ』や『火垂るの墓』などに参加して修行を重ね、監督を務めた『新世紀エヴァンゲリオン』で一世を風靡しました。 2016年の『シン・ゴジラ』では脚本・総監督を務め、現在は脚本・監督を務める『シン・仮面ライダー』を鋭意制作中とのこと。 企画・脚本を務める『シン・ウルトラマン』は、5月13日から公開が予定されています。 ……メジャーなタイトルばかりで、キーボードを打つ私の手が震えています。
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展示風景
『庵野秀明をつくったもの 庵野秀明がつくったもの そして、これからつくるもの』 というコンセプトのとおり、本展は庵野さんのインプットとアウトプットを、概ね時系列で辿る展覧会。 以下の5章構成で、少年時代の膨大なインプットから手がけた作品群、これから公開が予定されている仕事を見ていきます。

1章「原点、或いは呪縛」

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展示風景
「庵野秀明をつくったもの」の展示。 ウルトラマン、仮面ライダー、サンダーバード、宇宙戦艦ヤマト、機動戦士ガンダムなど、庵野さんが幼少期から敬愛する漫画、アニメ、特撮作品の資料が展示される。 庵野さんがメカに魅了されるきっかけとなった、実家で保管されていた足踏みミシンも。

2章「夢中、或いは我儘」︎

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展示風景
2章と3章は「庵野秀明がつくったもの」の展示。 2章では、学生時代に自主制作した映画『ナカムライダー』『ウルトラマン』(ウルトラマンのオマージュ)から、アニメーターとして参加した『風の谷のナウシカ』『火垂るの墓』、初めて監督した『トップをねらえ!』、監督作の『ふしぎの海のナディア』『新世紀エヴァンゲリオン』など、庵野さんがこれまでに手掛けた作品を映像や絵コンテとともに紹介。 学生時代の作品にも、カット割りや特殊効果の付け方にアマチュア離れしたセンスが見て取れる。

3章「挑戦、或いは逃避」︎

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展示風景
『新世紀エヴァンゲリオン』のあと、アニメによる表現に限界を感じた庵野さんが手がけた実写映画『ラブ&ポップ』をはじめ、多岐にわたる作品を紹介。 『美少女戦士セーラームーンS』、『キューティーハニー』、『日本沈没』など。 『シン・ゴジラ』、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』も本章で紹介。

4章「憧憬、そして再生」︎

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展示風景
4章は「庵野秀明がこれからつくるもの」を展示。 これから公開が予定されている『シン・ウルトラマン』と『シン・仮面ライダー』が紹介されている。

5章「感謝、そして報恩」︎

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展示風景
アニメ特撮アーカイブ機構の活動の紹介など、アニメと特撮の文化を後世に残すための活動を紹介。 トップクリエイターとなった庵野さんの、自身を作った文化に恩返しをしたいという思いが感じられる。 以上の5章を通し、庵野秀明をつくったもの、庵野秀明がつくったもの、これからつくるものがわかる展覧会でした。
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展示風景
同時に、人の心を動かす仕事がどのように生まれるのかがわかりました。 良い作品を生むためのノウハウや方法論は存在しません。 それまでに、心を動かされた経験がどれだけあるか。 どれだけ夢中になってきたか。 その蓄積が良い作品を生む土壌となり、夢中で仕事をすることで、ようやく人の心を動かせるのですね。
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展示風景
アマチュア時代から現在まで、庵野さんが夢中で制作に取り組んできたことは、展示のあちこちから感じられます。 例えば、自主制作映画でウルトラマンを演じたときの活き活きとした表情に。 あるいは、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に登場する「第3村」の模型に。
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展示風景
これは良いカメラアングルを探し、臨場感のあるアニメの画面を作るための模型なので、実際の画面には登場しません。 アニメのシーンのためだけに模型を作るのがどれほど非効率かは、察するに余りあるところ。
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それゆえ、アニメ制作を知らない私のような人間は「ここまでこだわるなんて凄い!」という感想を持つのですが、庵野さんにとっては当然の努力の範疇なのだと思います。 だって夢中だから。 好きでやっている仕事だから、クオリティを高めるためには何でもするし、妥協という選択肢は最初から無いのでしょうね。 (効率中毒の現代社会との相性は悪いと思いますが、話が逸れるのでそれはまた別の機会に)
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展示風景
夢中であること。 アニメや特撮のみならず、どんな領域でも人の心を動かす仕事ができる人は、自分自身が誰よりも夢中になっているのだと思います。 私にはそこまで夢中になれるものが無いよな……と寂しい気持ちにもなりました。 もし、才能というものがあるとすれば、それは「夢中になれること」です。 今、何か夢中になっている人には、どうかそれを貫いてほしい……と夢中になれるものが無い私は思います。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:庵野秀明展 会場:あべのハルカス美術館 会期:2022年4月16日(土)~6月19日(日) 開館時間:火~金/10:00~20:00 月土日祝/10:00~18:00 ※入館は閉館30分前まで 公式HP:https://www.annohideakiten.jp/

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