京都にあるギャラリー「艸居」にて、兵庫を拠点に活動する秋永邦洋(あきなが・くにひろ)さんの個展『存在/不在』を拝見しました。
動物大好き人間の私の感性にブスブス刺さる、動物を題材にした立体作品の展示でした。
会期は8月31日までです。

FullSizeRender
秋永邦洋 朧気(犬)2022 陶 H54 × W17 × D40 cm 朧気(猫)2022 陶 H46×W14×D37㎝
秋永さんは、架空の動物やペットなどを題材に、陶で立体の作品を制作しています。 しっかりと四本の脚で立つ動物たちは、一見、本物を魔法で石にしたかのようにリアルに見えます。 しかし、体の後ろのほうは煙になって消えていくような、崩壊していくような表現になっています。 重力に逆らって天に昇っていくかのような、彫刻らしからぬ軽やかさを持った作品には、どんな意味が込められているのでしょうか。
FullSizeRender
秋永邦洋 朧気(犬)(部分)2022 陶 H54 × W17 × D40 cm
秋永さんは、現代社会を「現実と非現実の境が見えにくい状態」と捉えているそうです。 情報が氾濫して本質が見えにくくなった社会、現実と非現実の境界を曖昧にする仮想空間……。 または、人間の脳の情報をデータ化し、ネットワーク上に保存する研究。 肉体が存在しなくても、意識はネット上に残せるかもしれないらしい。 人工的に幽霊を作り出すようなことなのか、と秋永さんは疑問を口にしていました。
FullSizeRender
秋永邦洋 朧気(鳳凰) 2022 陶 H63 × W46 × D46 cm
こうした問題意識から、半分は生きている状態、もう半分は魂が抜けて崩壊していく様子を、動物をモチーフに表現したそうです。 また、焼き物は内側が空洞になっていることをご存じでしょうか? 秋永さんの作品では、動物たちの身体の表面に穴が開いているので、内側の何もない空間も見ることができます。
FullSizeRenderFullSizeRender
秋永邦洋 朧気(狼)2022 陶 H63 × W24 × D80 cm
焼き物の代表選手といえば信楽焼のタヌキだと思うのですが、あのタヌキも、内側にぎっしり土が詰まっているわけではありません。 粘土を均一に乾かし、亀裂や割れを防ぐためには、内側を空洞にしておく必要があります。 これは焼き物に共通する一般的な問題ですが、先入観や重たそうな表現から、中が空洞であることを意識する機会はほとんど無いと思います。
FullSizeRender
秋永邦洋 朧気(兎)2022 陶 H58 × W14 × D32 cm
秋永さんは、中が空洞であることを隠してしまう置物のような表現に違和感があるそうです。 焼き物の本質は「外側の形はあるけれど、内側には何も無いという虚構」です。 空洞の内側も見せた上で成立する造形を作りたい、と長らく考えてきて、体が崩壊しかけるという今作のテーマによく合うことから、作品化に至りました。
FullSizeRender
秋永邦洋 朧気(兎)(部分)2022 陶 H58 × W14 × D32 cm
私も作品を鑑賞しながら、作家の問題意識と制作方法のベクトルがぴったり合っていることを感じて、心地よくなりました。 ずれの無い作品は佇まいが違います。 作品が堂々と胸を張り、「どこに展示されても恥ずかしくありません」と語りかけてくるのです。 現実・非現実、存在・空洞といった二項対立は、私たちにとって身近なテーマです。 他にも、嘘と真実、発達と犠牲、自然と文明など、秋永さんの作品から色々なテーマを導くことができます。 現代社会を鏡映しにし、私たちが生きる意味と未来の展望を問う展覧会でした。
FullSizeRender
秋永邦洋 朧気(鹿)2022 陶 H100 × W20 × D80 cm
と、小難しいことを書いてしまったかもしれませんが、動物の表情が愛くるしいので動物好きな人にぜひご覧いただきたいです。 瞳の濡れたような表現、堂々とした面持ちなど、愛嬌があって撫でまわしたくなりました。
FullSizeRender
秋永邦洋 擬態化(龍)2021 陶 H85 × W43 × D58 cm
上記の新シリーズの前に手がけていた骨格シリーズも展示されています。 死を連想する骨と、生きている人の欲望を満たす装飾を掛け合わせた作品で、欲望の行き着く先を想起させられました。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:秋永邦洋個展「存在/不在」 会場:2022年8月4日(木)‒8月31日(水)    ※夏季休廊2022年8月14日‒8月22日 公式HP:http://gallery-sokyo.jp/

関連情報

YouTubeの動画づくりを頑張ってます!
読者登録していただくと、LINEに「アートの定理」の更新情報が届きます! コメント・メッセージはマシュマロで! ⇒マシュマロを投げる ※ネガティブな内容、性的な内容、スパム等はAIにより削除されます。 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新のレビューは「アートの定理 トップページ」からご覧ください。 ツイッターでは、ブログに載せていない写真も掲載しています! 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします! にほんブログ村 美術ブログ いろいろな美術・アートへ
にほんブログ村