「明菜さんが一番好きな芸術家は誰ですか?」と聞かれると、大勢の名前が一斉に脳みその奥から出てこようとして眉間の後ろあたりの細いところで詰まってしまうのですが、「日本の芸術家では誰が一番ですか?」という質問になら、すっと答えることができます。
岡本太郎が好きです。

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《太陽の塔(1/50)》1970 川崎市岡本太郎美術館
好きなところを挙げればキリが無いですよ。 ぶつかり合うような原色の色彩とか、独創的なモチーフとか。 けれど、私が太郎さんを好きなのはそうした造形の表面部分ではなくて、もっと深いところで崇拝しているのだと思います。
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展示風景
「今日の芸術は、うまくあってはならない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」 太郎さんが1954年に刊行した『今日の芸術』の有名な一節です。 これはイキった逆張りではなく、越えていかなければならない課題を的確に捉えた文章だと思います。 美術とは綺麗なもの、美しいものだと思っていた中学生の頃、大きな衝撃を受けました。
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《重工業》1949 川崎市岡本太郎美術館
かくして敷かれたレールから逸れよう逸れようとするイキリ女子中学生が爆誕してしまったわけですが、すると、私の岡本太郎ファン歴は15年くらいになるのですね。 そんな私が「ここに住ませてくれ~!」と泣きながら土下座したくなる展覧会が、大阪中之島美術館で開催されています。 『展覧会 岡本太郎』は大阪で10月2日まで開催されたあと、東京、愛知にも巡回予定です。 本展は以下の6章構成。 概ね時系列順に約300点という膨大な数の作品が展示される、史上最大規模の岡本太郎の回顧展です。

第1章:“岡本太郎”誕生 —パリ時代—

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《傷ましき腕》1936 / 49 川崎市岡本太郎美術館蔵
岡本太郎(1911-1996)は、18歳のときに家族とともにヨーロッパに渡り、単身でパリに残って芸術家を目指し始めた。 ピカソの作品から受けた衝撃や前衛芸術からの影響など、《傷ましき腕》を始めとするパリ時代の作品を通して岡本太郎の"誕生"を探る。
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展示風景
なお、戦前のパリ時代の作品はすべて消失したとされていた(《傷ましき腕》などは再制作)。 しかし新たに岡本太郎によると推定される作品3点がパリで見つかり、本展で展示されている。

第2章:創造の孤独 —日本の文化を挑発する—

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展示風景
第二次世界大戦の勃発によりパリを離れ、中国戦線へ出征したのち、太郎は1946年に幅員。 旧態依然とした日本の美術界に対し、「絵画の石器時代は終わった。 新しい芸術は岡本太郎から始まる」と宣言する。 本章では《夜》《森の掟》《重工業》などの代表作を含む、1940~50年代の作品を展示。

第3章:人間の根源 —呪力の魅惑—

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展示風景
前衛芸術を極める一方、太郎は自らの出自としての日本文化にも目を向ける。 特に、1951年の縄文土器との出会いは作風を転換するきっかけにもなった。 《太陽の塔》をはじめとする60年代の作品が生まれる前夜の、太郎の脳内を探ることができる内容だ。

第4章:大衆の中の芸術

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展示風景
「芸術は大衆のものだ」と語った太郎。 キャンバスに描く絵画だけでなく、パブリックアートや生活用品、新聞広告なども手掛けるように。 ジャンルにとらわれず、様々な創作活動に挑戦したその足跡が分かる。

第5章:ふたつの太陽 —《太陽の塔》と《明日の神話》—

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《明日の神話》1968 川崎市岡本太郎美術館
1970年の大阪万博を象徴する《太陽の塔》の模型と、渋谷駅に設置されている幅約30メートルの壁画《明日の神話》の下絵(幅約11メートル)を展示。 同時期に取り組んだ2つの作品を比較すると、太郎が人間をどんな生き物として捉え、本当の意味での人類の進歩をどのように考えていたのかを窺い知ることができる。

第6章:黒い眼の深淵 —つき抜けた孤独—

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《雷人》1995(未完) 岡本太郎記念館
大阪万博を経て、岡本太郎という芸術家の存在はより広く世間に知られるようになった。 制作意欲はその後も衰えず、むしろ死に向かって勢いを増していく。 本章では晩年の作品が展示される。 また、若かりし頃に描いた絵に上描きした作品も展示されている。 権威に戦いを挑み続けているうちに、いつしか自分が権威となっていた太郎にとって、次に戦う相手は自分だったのだろうか。 と、このように芸術家・岡本太郎の誕生から最晩年までを展観できる大回顧展となっております。
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《夜》1947 川崎市岡本太郎美術館
若き日のパリ時代から晩年までの作品を通して見ると、年を追うごとに作品のエネルギーが高まっているのがよく分かります。 太郎さんの人生はクレッシェンドでした。 常識や偏見など自分が壊したいものを見つけては、戦いを挑んできた太郎さん。 そうした生き方を貫くのは、どれほど大変なのだろう……と31歳になった私はため息をつかずにはいられません。 中学生の頃は太郎さんのように生きたいと思っていたはずなのに、おかしいですねえ……。
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《坐ることを拒否する椅子》1963 川崎市岡本太郎美術館 ※本展では来場者が腰かけることができます!
作品から溢れ出る情熱は、見る人の心を鼓舞してくれると思います。 心が疲れた大人こそ、感じ入るものがあるのではないでしょうか。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:展覧会 岡本太郎 会場:大阪中之島美術館 4階展示室 会期:2022年7月23日(土)~10月2日(日) 休館日:月曜日(9月19日を除く)※災害などにより臨時で休館となる場合あり 開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで) 公式HP:https://taro2022.jp/ 【巡回予定】 ○2022年10月18日(火)~12月28日(水)@東京都美術館 ○2023年1月14日(土)~3月14日(火)@愛知県美術館

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