京都国立博物館で特別展「京に生きる文化 茶の湯」が12月4日まで開催されています。
茶碗をはじめとする名品を通し、中国から日本にもたらされたお茶文化の歴史を学ぶことができました。

FullSizeRender
展示風景(前期)
お茶を飲む文化の始まりは平安時代後期とされており、その歴史はなんと1000年以上。 本展には長大な歴史の中で生まれた数々の名碗や資料が展示され、圧巻の展示となっています。 何度訪れても新たな発見ができました。 特に見ておきたいポイントは、すでにイロハニアートと楽活でご紹介しました。 イロハニアートは、豊臣秀吉が愛用したとされる名碗など、 楽活は、四頭茶礼や闘茶といったお茶文化についてです。 展示を見て強く感じたのが、名品の外面を愛でるだけにとどまらず、その奥にある無形の情緒を読み取りたい、ということ。 なぜお茶は人々に愛され、1000年以上も続いてきたのか。 独特の芸術性が感じられる内容でした。
FullSizeRender
展示風景(前期)
儀式に使われたり、ときに賭け事に使われたり、お茶と人の関わりは多彩ですが、やっぱり見逃せないのは、千利休が大成した「茶の湯」の文化。 茶の湯とは、お茶を点てる・いただく部分だけでなく、合理的かつ美しい作法、茶碗などの茶道具、床の間を飾る掛け軸や花も含めた時間・空間全体でもてなす総合芸術です。 これって……究極の美ではありませんか? 「お茶を振る舞う」という一瞬のために身を捧げる行為で、凄く美しいなと思ったんです。
FullSizeRender
展示風景(前期)
お茶を振る舞う側は当日までにお茶やお菓子を準備し、茶道具を吟味し、床の間の取り合わせを考え……と、やることがとにかく多い。 しかも「どの茶道具なら100点か」といった正解が無いので、時間と労力さえかけられれば、いくらでも身を削ることができてしまいます。 それを自分のためではなく「客人のため」に行うのですよね。 心が豊かでなければできない行為では。 利休が生きた戦乱の世にこうした文化が育ったことも、よく考えると不思議だなあと思います。 (とはいえ、「良い茶道具を持っていると自慢したい」「素晴らしい茶会だったと褒められたい」という感情が茶人たちにまったく無かったとまでは言いません、人間ですから)
FullSizeRender
右:国宝「待庵」の再現展示 左:「黄金の茶室」(復元品)京都市蔵
総合芸術といっても、絵画や彫刻などと違い、茶の湯は無形の芸術です。 その場にいた人の記憶以外のどこにも残りません。 その場にいた人だって、いつか忘れてしまうかもしれないし……。 そんな「儚い時間」のために身を捧げるのが茶の湯なんだ……と、展覧会を通じて学びました。 しかも、生存本能から逸脱した行為なのが素晴らしい。 お茶を振る舞うという行為は、生きのびるための水分補給の範囲を大きく超え、「人間らしさ」に寄っています。 これこそ芸術です。
FullSizeRender
展示風景(前期)
1000年以上もお茶が愛されてきた理由は、無形の美の追求という献身的な行為が、人々を惹きつけてやまないからではないか、と感じました。 場を共有した人々の記憶の中で永遠に……とはいかず記憶は風化するでしょうけど、茶の湯の懐の深さならそれすらも美として受け止めてくれそうな気がします。 取材させていただいたのは前期展示で、現在は後期展示に突入。 展示替えもあり、ますます充実した内容となっているので、何度でも訪れたい展覧会です。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:特別展「京に生きる文化 茶の湯」 会場:京都国立博物館 平成知新館 会期:2022年10月8日(土)~12月4日(日) 主な展示替: ○前期展示=10月8日(土)~11月6日(日) ○後期展示=11月8日(火)~12月4日(日) ※会期中、一部の作品は上記以外にも展示替あり 休館日:月曜日 開館時間:午前9時~午後5時30分(金・土曜日は午後8時まで開館)※入館は閉館の30分前まで 公式HP:https://tsumugu.yomiuri.co.jp/chanoyu2022

関連情報

YouTubeの動画づくりを頑張ってます!
読者登録していただくと、LINEに「アートの定理」の更新情報が届きます! コメント・メッセージはマシュマロで! ⇒マシュマロを投げる ※ネガティブな内容、性的な内容、スパム等はAIにより削除されます。 弊ブログのメインコンテンツは展覧会の感想です。 最新のレビューは「アートの定理 トップページ」からご覧ください。 ツイッターでは、ブログに載せていない写真も掲載しています! 最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました! 良かったら応援クリックお願いします! にほんブログ村 美術ブログ いろいろな美術・アートへ
にほんブログ村