奈良国立博物館にて、式年造替記念特別展「春日大社 若宮国宝展ー祈りの王朝文化ー」が開幕しました。
会期は2023年1月22日(日)までです。

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展示風景
御造替(ごぞうたい)とは、社殿を造り替え、神宝や調度品などを新調する事業のことで、20年に一度を式年として行われてきました。 本展は、2022年10月に春日大社の若宮の本殿御造替が完了したことを記念した展覧会です。 本展では、藤原摂関家をはじめ平安貴族たちが奉納した太刀や弓、飾り物などの工芸品が数多く展示されています。 蒔絵や螺鈿など細かな装飾が惜しみなく施された品々に、豪華絢爛、きらびやかな王朝文化の世界を見出すことができました。
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《金地螺鈿毛抜形太刀 復元模造》(部分) 現代 平成30年(2018) 文化庁
さらに、これまでの御造替にかかわる資料や、保延2年(1136)に始まり現代も続いている「春日若宮おん祭」に関する資料も展示されています。 平安時代から現代まで、作品や無形の文化という形で受け継がれてきた伝統を紹介する本展。 私たち現代人の「継承」への意識を問う内容だったとも感じました。 本展は以下の4章で、平安時代から現代に至るまでの連続した信仰と文化を見せる構成でした。

第一章 春日若宮神の誕生

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展示風景
春日若宮神は、長保5年(1003)3月3日巳刻(午前10時頃)に、春日大社本社の第四殿に蛇の姿で顕現したと古記に伝えられている。 本章では古記録や絵画作品などを通じ、若宮神の誕生と信仰の広がりが紹介される。

第二章 若宮御料古神宝の世界ー王朝文化の粋ー

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《金鶴洲分) 現代 令和4年(2022) 奈良 春日大社
若宮神は藤原摂関家や鳥羽上皇から篤く信仰され、藤原忠実、忠通、頼長らをはじめとした摂関家の奉納品が多数存在する。 それらを含む「若宮御料古神宝類」として国宝に指定された品々すべてと、それらを現代の人間国宝が再現した品々を中心に展示。

第三章 御造替の伝統

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展示風景
御造替にかかわる記録類と過去の御造替で撤下(神前に供えた品を下げること)された品々の展示により、平安時代から続く伝統を紹介。

第四章 若宮信仰の発展とおん祭

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展示風景
絵巻や装束の展示を通し、若宮神を寿ぐ「春日若宮おん祭」が紹介される。 おん祭は保延2年(1136)、関白であった藤原忠通によって始められたと伝えられている。 以上の4章構成で、春日若宮神の誕生から現代に受け継がれる伝統文化をたどります。 特に見応えがあったのが、第二章の展示です。 奉納された太刀や飾り物は細かな装飾が凝らされ、平安貴族の美意識の高さを伝えていると感じました。
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《本宮御料古神宝類 蒔絵箏》(部分) 平安時代(12世紀) 奈良 春日大社
また、現代の調査や技術によって復元された作品と比較できるのも興味深かったです。 蒔絵や螺鈿の細工が再現された太刀や箏……手間暇のかかった細かな装飾は、言葉を失うくらい素晴らしかったですよ。
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《本宮御料古神宝類 蒔絵箏 復元模造》(部分) 現代 昭和55年(1980) 奈良 春日大社
制作された当時はこんなにもきらびやかだったのか! と、平安貴族の美意識の高さに驚きました。 現代の美的な感覚をそのまま当てはめても、美しさや技術の高さを感じられるのが凄い。 千年の時間が流れても、人間の感性はあまり変わらなかったのかもしれません。 そして、実物だけでなく復元をあわせて展示するところに、本展の重要なメッセ―ジが込められているように思います。
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《本宮御料古神宝類 蒔絵箏》(部分) 平安時代(12世紀) 奈良 春日大社
どんなに大切にしても作品は経年で変化するし、目を引く新しいものが登場すればスポットが当たらなくなって忘れられていきます。 「創る」という行為は儚いことなんです。 その儚さを克服するのも、「残す」という人間にしかできない行為です。 伝統や文化をつないでいくことの難しさを、改めて考える展覧会でした。 人から人へ受け継がれてきた思いを知るとともに、そのバトンを受け取った私たちはどうするのか、行動を問われているように思います。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加 ※取材許可を得て撮影しました。

展覧会基本情報

展覧会名:式年造替記念特別展「春日大社 若宮国宝展ー祈りの王朝文化ー」 会場:奈良国立博物館 東・西新館 会期:令和4年(2022)12月10日(土)~令和5年(2023)1月22日(日) 休館日:毎週月曜日(ただし、1月2日[月・休]、1月9日[月・祝]は開館)、年末年始(12月28日~1月1日)、1月10日(火) 開館時間:午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで 公式HP:https://www.narahaku.go.jp/exhibition/special/special_exhibition/202212_wakamiya/

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