『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』主観レビュー。

世の中には2種類の人間がいる。 バスキアに魅了される人と、魅了されない人だ。
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ジャン=ミシェル・バスキア Self Portrait, 1985 Private Collection Photo: Max Yawney Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York
グラフィティ(俗に言う落書き)からアート界に参入したバスキアの絵には、強烈なエネルギーが込められています。 勢いのある絵画に魅了されたのは、株式会社ZOZO創業者の前澤友作氏だけではないでしょう。
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ジャン=ミシェル・バスキア Untitled, 1982 Yusaku Maezawa Collection, Chiba Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York
森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)で『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』が始まりました。 私は引き算の美が好きなので、バスキアの作品はいささかトゥーマッチに感じます。 しかし、意味を成すのか成さないのか分からない、不思議な単語や記号は見始めると止まりません。
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ジャン=ミシェル・バスキア Carbon/Oxygen, 1984 Hall Collection Photo: Raul Valverde / onwhitewall.com Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York
例えば《Carbon/Oxygen》には、772000÷103の筆算が描かれています。 しかしよく考えると、正しい計算ではない。 同じような筆算は他の作品にも登場していますし、意味があるのか無意味なのか、狐に摘まれた気分です。
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ジャン=ミシェル・バスキア Napoleon, 1982 Private Collection Photo: John R. Glembin Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York
本展では絵画だけでなく、立体作品やドローイングも多数展示されています。 ノートに単語が書かれたポエムは、1つ1つ読んでいきたいもの。 その中から、気になったポエムを引用します。
ANDY'S TRAP
NO DICE
STRICTLY CASH
PIAGETT WATCHES
ANDYは、バスキアとも交流が深かったアンディ・ウォーホルのことでしょう。 PIAGETTはもちろん高性能・高級なスイスの時計メーカー「ピアジェ」のこと。 腕時計好きのウォーホルは特にピアジェを愛用しており、そのモデルは逆に「アンディ・ウォッチ」と呼ばれるようになったそう。
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ジャン=ミシェル・バスキア ©Roland Hagenberg
では何がトラップで、どうしてキャッシュなのか… を当てることはできないのですが、アート、アーティスト、お金の関係を皮肉っているように感じられる詩です。 「真意は書いた本人にしか分からない」のを良いことに、世相を皮肉る飄々とした性格にアートシーンは翻弄されていたのでしょう。 しかも、バスキアにとって憧れでコラボもしたウォーホルに対して、斜に構えているようにも感じられるのはなぜだろう? NO DICEとは「ダメ」って意味ですからね。 ギャンブル由来の言葉で、その俗っぽさもバスキアの狙いなのではないでしょうか?
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ジャン=ミシェル・バスキア Plastic Sax, 1984 agnès b. collection Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York
バスキアが活躍した80年代は、日本がバブル景気に湧いていた頃とも重なります。 読者の皆さんもご存知のとおり、日本の美術館もアートマーケットで存在感を放っていました。 日本の公立美術館にバスキアの作品が多く収蔵されていることをご存知でしたか? あまり知られていないのですが、バブル期にコレクションされた作品が多いのです。
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ジャン=ミシェル・バスキア Bombero, 1983 Kitakyushu Municipal Museum of Art Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York
本展は約130点の絵画やオブジェ、ドローイングなどから構成される展覧会で、日本の公立美術館のコレクションもその中核を成しています。 大規模な展覧会なのに海外には巡回しない予定なので、世界のバスキアファンが羨む展覧会となっています。
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ジャン=ミシェル・バスキア Fooey, 1982 The Museum of Art, Kochi Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York
また、本展は音声ガイドが無料で借りられるので、絶対に借りましょうね。 ナビゲーターは女優の吉岡里帆さんです。 吉岡さんも現代アートがお好きなのだそうで、ぴったりのお仕事です。
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本展記者発表会で登壇した吉岡里帆さん
さらに、条件を満たすと2回目は無料で入場できる特典も!(詳細は公式サイトを参照) 【対象】 11月1日(金)までに入場し、会場出口にて所定の写真撮影をした人 【二度目の入場可能日】 11月8日(金)までの平日17:00~20:00(入場は閉館の30分前) ※ 10/21(月)、11/9(土)以降は除く
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ジャン=ミシェル・バスキア Onion Gum, 1983 Courtesy Van de Weghe Fine Art, New York Photo: Camerarts, New York Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York
実際に会場を訪れた私も、「もう一度訪れたい!」と強く思っています。 ドローイングや映像作品は、もっとじっくり見たいですね。 Share!▶︎ このエントリーをはてなブックマークに追加

展覧会基本情報

展覧会名:バスキア展 メイド・イン・ジャパン Jean-Michel Basquiat : Made in Japan 場所:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階) 会期:2019年9月21日(土)-11月17日(日) 開館時間:10:00-20:00(10月21日(月)は17:00閉館、入場は閉館の30分前) 所要時間:2時間 観覧料:一般は2100円ほか 公式HP:www.basquiat.tokyo お問い合わせ:03-5777-8800(ハローダイヤル)

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